発達支援マニュアル―子どもの状態別対応法― 2023年度版

 私たち、スポーツ&スタディ稲沢は、研究で得られた理論を実践で応用する方法や、その成果をホームページで公表しています。今回、子どもの状態から対応法を調べられる発達支援マニュアルを作成しました。作成に当たり、2016年4月1日から2023年12月25日までの期間に作成した支援内容439本から86本を抽出しました。そして、子どもの状態を、「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性(ソーシャルスキル)」「学習」の6種類に分類しました。

 子どもへの対応は、単に行動変容の手続きを実行すれば良い訳ではありません。何故その行動が生起するのか、又は何故その行動が生起しないのかを分析し、その子その子に合わせて考えていくことが必要です。また、問題行動に対応するだけではなく、日頃から子どもを褒めるなどし、予め信頼関係を築いておくことも大切です。子どもへの対応法に決まった答えはありませんが、子どもへの対応を考えるとき、私たちの情報が一つのヒントになれば幸甚です。

 私たちは、引き続き、研究結果から得られた最も優れたエビデンス(科学的根拠)と指導スキル(経験・知識)を統合し、療育を実施していきます。また、保護者の方に寄り添い、子育ての応援をしていきます。


目次

健康・生活

行動連鎖化により、スプーンを使って食べることができるようになる

身だしなみを整える等、生活面において自分でできることを増やす

遊びを通して、スモールステップで練習に取り組み、楽しみながらできることを増やす

自分でやってみる機会を設け、生活面においてできることを増やす

毎日少しずつの練習を積み重ね、できることを増やす

遊びを通して生活技能の向上を図り、楽しみながらできることを増やす

安心できる環境で様々なことにチャレンジし、できることを増やす

荷物の整理整頓を一緒に行い、整理整頓の仕方を覚える

スモールステップで練習を行い、少しずつできることを増やす

褒めてやる気を引き出し、姿勢の維持や帰りの準備ができるようになる

一定時間内に帰りの準備ができるようになるー前頭前野下辺縁皮質でコントロールする習慣的行為ー

運動・感覚

様々な活動を楽しみ、元気よく過ごすことができる

運動エフェクトの中で様々な動きを経験してもらい、できることを増やす

自閉症児の身体図式の形成と運動イメージの更新に重点を置いた運動支援

認知・行動

苦痛と価値を理解し、すべきことに積極的に取り組むことができるようになるーACTの導入による心理的柔軟性の獲得ー

周囲の配慮により興奮することを減らし、落ち着いて過ごすことができる

認知療法を用いて物事の捉え方を少しずつ変え、不適応行動を減らす

論理療法を通して適応的な物事の捉え方を知り、不適応行動を減らす

分化強化を行い適応的な行動の割合を増やすとともに、適応的な行動をほめて自己肯定感を高める

繰り返し経験することにより、ルールに沿った動きができるようになる

運動エフェクトのルールを覚え、楽しく活動する

楽しい環境の中で発達的なアプローチを実践し成長を促す

感情をコントロールし、穏やかに過ごせる日を増やすー最近接発達領域(ZPD)の観点から考える支援ー

言語・コミュニケーション

ゆっくりと話すことを意識する機会を増やし、習慣化する

決まった場面において、必要なことを自分から言うことができるようになる

楽しい環境を提供し、要求言語を引き出す

帰りの会の発表に向けた準備を通して、発表で求められている内容を理解する

事前の声掛けにより、ゆっくりと話したり、適切に答えたりすることができるようになる

ナラティブ・アプローチを通して、帰りの会の発表が上手にできるようになる

項目特定処理の活動を通して語用能力を伸ばし、言葉の表出がよりスムーズにできるようになる

カレンダーを用いて、時を表す言葉やその意味を覚えるー刺激等価性の観点からの支援ー

相手に伝わるように話すことができる

人間関係・社会性(ソーシャルスキル)

事前の声掛けにより、次の行動にスムーズに移ることができるようになるー行動レパートリーを持っている場合の応用行動分析による行動変容の手続きー

好きなことや興味のあることを活動につなげ、活動への参加を促す―動因操作を用いて子どものモチベーションを向上させる支援―

その場に合った行動をその都度伝え、適応行動を増やすー問題行動を消去し、適切な行動を強化する分化強化による支援ー

予めの声掛けにより注意を促し、話を聞くことができるようになる

適応的な行動への注目により注目欲求を満たし、不適切な行動を減らす

友達との関わりを増やし、友達との関係の取り方を少しずつ身に付けるーピアジェの認知発達理論における自己中心性の理解と脱中心化の促進を図る支援ー

一時的に刺激を統制してその場に合った振る舞い方を覚え、不適切な行動を減らす

物事を前向きに捉え、適応的に振る舞うことができるようになる

活動への参加に向けて、スモールステップで課題を設定し、できることを増やす

ケース・フォーミュレーションを用いて課題を一緒に整理し、適応的に振る舞うことができるようになるーPFスタディの結果から考える支援ー

運動場面において、思い通りにならないことを柔軟に受け入れる心を育む

現在の良い状態を維持しつつ、青年期に向けて少しずつ準備を進めていく

様々な経験を通して、相手に合わせた話し方を身に付ける

物事の見方の違いから生じる不適応行動を改善する

思い通りにならないことに対処する力を伸ばし、不適応行動を減らす

今何をすべきかを考え、行動に移すことができるようになる

目標を設定することによりがんばりたい気持ちを引き出し、登校をサポートする

予めの声掛けにより注意を促し、不適切行動を減らす

話を聞く態度をルール化して具体的に伝え、印象の良い聞き方を身に付ける

話を聞く態度をルール化し、意識して行動を正すことができ

確立操作により、適応行動を身に付ける

継続的な支援により、衝動的な行動を抑えることができる

その時の気分に左右されず、活動に参加することができるようになる

対話を通じてマインドフルネスのスキルを身に付ける

適応的な振る舞い方を知り、実行することができる

成功体験やモデリングを通して、自己効力感を高める

様々な経験を通して、適応的な振る舞いを知り、実行することができる

様々な経験を通して社会性を伸ばし、音声による指示に反応できるようになる

楽しい環境を提供し「やりたい」という気持ちを引き出し、適応的な行動を増やす

家庭と連携してトークン・エコノミー法を用いた支援を行い、安定して登校することができる

様々な経験を通して道徳性の発達を促し、不適切発言や不適切行動を減らす

課題分析をして一つ一つできることを増やし、指示を聞くことができるようになる

誤学習された行動を改善するとともに、適応的な振る舞い方を知り、実行することができるようになる

気の進まないことにも取り組むことができるようになる

運動エフェクトを通して、身体の抑制力を高める

その場に合った振る舞い方を知り、実行することができる

人との関わりを楽しみ、相手に聞こえる声の大きさで話すことができるようになる

経験を通して、それぞれの場に合った行動を知り、適切に振る舞うことができる

危険や怪我につながる可能性のある行動を自覚し、減らしていく

ADHD児に対する自尊感情向上のための支援について

友達と遊んだり運動したりし、生き生きと生活することができるー不安と記憶の関係について脳のメカニズムから考える支援ー

友達と仲良くするためのルールを知り、守ることができるールール支配行動を用いた支援ー

正統的周辺参加により、その場にふさわしい態度及び振る舞い方を覚える

落ち着いて座ることができるようになる

学習

学校の授業に沿った内容を繰り返し練習し、学習内容の定着を図る

宿題のサポートに加えて補習を実施し、学習内容の理解度を高められるよう支援する

気分が乗らない時にもすべきことに取り組むことができるようになる

トークン・エコノミー法を用いて、毎日きちんと宿題を提出することができる

声掛けを増やし、適応的な学習態度を身に付ける

書字支援を実施し、書く負担を減らしてできる範囲で取り組むことができる

語のまとまりを意識して読む練習をし、短い文をスムーズに読むことができるようになる

非語を読む練習を繰り返し、短い言葉を流暢に読むことができるようになる

文節単位読み訓練手続きを用いて、文章をよりスムーズに読むことができるようになる

干渉条件を主としたRSTを通して、不要な情報を抑制する力を伸ばし、読解力を向上させる

様々な活動を通して、楽しみながら読解力につながる力を伸ばす-メタ認知や心の理論の発達を促し包括的読解力の向上を図る-