思い通りにならないことに対処する力を伸ばし、不適応行動を減らす

 明るい性格で、様々な活動に積極的に取り組み、楽しそうに過ごしています。対人関係の面では、仲の良い友達ができ、いつも一緒に遊んでいます。その友達も「今日、○○君(本児)来る?」と一緒に遊ぶことを楽しみにしており、良好な関係を維持することができています。また、以前は帰りの車で前の席に座ることにこだわっていましたが、いつも同じ車で帰る友達と仲良くなったことで、「今日は○○君と一緒に座る」と後ろの席に並んで座るようになりました。また、友達と一緒に遊ぶことが楽しいと感じられる経験を積み重ねてきたことにより、仲の良い友達とだけでなく、他の友達とも積極的に関わるようになっています。具体的には、挟みドッジボールをしている子に自分から声を掛けて仲間入りする等、多人数の遊びに参加することが多くなりました。今後も友達との良好な関係を保つことができるよう、仲介及びアドバイスをしていきます。

 運動の面では、苦手な種目にも取り組むことができるようになり、がんばっています。ドリブルの記録会では、ドリブル100回を合格し、現在はV字ドリブルに挑戦中です。難しいと言いながらも練習を続け、少しずつ記録を伸ばしています。長縄では、回っている縄に入って跳ぶタイミングが上手になり、引っかかることがほとんどなくなりました。また、ジグザグジャンプが得意で、ピョンピョンと軽快に進むことができます。集団遊びでは、ルールをしっかりと守り、楽しんでいます。鬼ごっこ系の遊びでは、友達を捕まえるまで諦めることなく追いかけ続けることができ、がんばっています。ドッジボールでは、以前は「強く投げられないから」とボールを投げることを避けていましたが、最近は積極的に投げるようになっています。経験を積むことによって少しずつ遠くまで投げられるようになり、自信をもってきています。先日は1回のゲームで5人も当てることができ、とても喜んでいました。今後も様々な運動に取り組んでもらい、少しずつできることを増やしていきます。

 学習の面では、切り替えが早く、集中して取り組み、早く終えることができています。公文では、コツコツと取り組み、順調に進んでいます。時々感情を高ぶらせてしまうこともありますが、穏やかに取り組むことができる日が多くなっています。今後も計算力をさらに伸ばすことができるよう、丁寧に学習支援をしていきます。

 気になる点は、怒ると友達を蹴ったり叩いたり、思い通りにならなかった腹いせに友達の邪魔をしたりしてしまう点、注意を受けた際、言い訳をしたり反抗的な態度をとったりする点、友達にちょっかいをかけたり、やりすぎてしまったりする点、「○○(友達の名前)負けろー」等、意地悪な言葉を言う点です。しかし、思い通りにならなかった時に暴れてしまうことがなくなったり、クールダウンするまでの時間が短くなったりし、情緒面において大きな成長が見られます。具体的な改善点は、ドッジボールの際、負けてしまっても「(ボールを)○○君に当てられたからよかった」「最後まで(内野に)残れたからよかった」と、別の理由を口にして怒らないことが多くなりました。また、レクリエーションの時にも同様の行動がとれるようになり、適応的な行動が別の場面に般化しています。今後も論理情動行動療法を用いた支援を継続し、情緒面の成長を促していきます。具体的には、様々な経験の中で、適応的な物事の捉え方を伝え、柔軟な考え方を身に付けてもらいます。本児は、相手チームの子がただ喜んでいるだけでも「○○がバカにしてきた」と訴えたり、友達とトラブルになった時に「○○が先にやってきた」と言い訳をしたりすることが多くあります。その都度どのように考えればよいかを伝え、客観的な物事の捉え方、適応的な態度を伝え、改善していきます。すぐに考えを変えることは難しいですが、繰り返し対話をすることにより、自分の非を認め、注意を素直に受け入れる柔軟な心を育みます。また、事前の声掛けにより注意を促したり、適応的な行動をほめて強化したりし、集団活動に適応する力を身に付けてもらいます。

 友達との関わりについては、仲の良い友達ができたことに伴って出てきた課題で、これから経験を通して少しずつ関わり方を学んでいく必要があります。本児は、相手が嫌がっていることに気付かずにやりすぎてしまったり、場の区別が難しく常にちょっかいをかけてしまったりしています。「○○君が嫌がっているよ」「今は話を聞く時間だよ」等と声を掛け、相手の気持ちや適応的な行動を具体的に伝えていきます。また、素直に応じてくれた場合に「止めてくれてありがとう」、問題が生じなかった場合に「ちょっかいをかけなかったね」とほめ、適応的な行動を強化していきます。ここまでの様子から、本児は事前に声を掛けておくことで、意識的に不適応行動を抑え、適応的に振る舞うことができます。事前の声掛けにより好循環になるよう支援し、適応的な行動を引き出していきます。

 最近の本児は、「今日はがんばる」と予め宣言したり、「今日はまだ一度も怒っていない」「今日は一度も怒らなかった」と報告したりすることが多くなりました。このような適応的な行動をとろうとする意識の高まりにより、不適応行動が出てしまう困り感のある状態から、適応的な行動をとる状態へと変容を遂げようとしています。今後も良い行動をほめてやる気を引き出し、不適応な行動を減らし適応的な行動を増やしていきます。

Juri F.