苦痛と価値を理解し、すべきことに積極的に取り組むことができるようになるーACTの導入による心理的柔軟性の獲得ー

 明るく活発な性格で、友達と積極的に関わり仲良く過ごすことができています。自由遊びの時間は、挟みドッジボールをすることが好きです。ボールを投げる経験を数多く積み重ねてきたことにより、ボールを投げることがとても上手になり、本児自身も自信をもっています。他には、走り高跳びや高鬼、8の字鬼等をして遊んでいます。身体を動かす遊びを好み、生き生きとした表情をしています。今後も友達との良い関係が維持されるよう、見守り及び助言をしていきます。

 コミュニケーションの面では、お話することが好きで、電車のことや学校のこと、家族で出掛けたこと等、様々なことを話してくれます。内容が詳しく、しっかりと相手に伝わるように話すことができ、上手です。帰りの会の発表では、以前に比べ大きな声で発表できるようになり、聞き取りやすくなりました。

 運動の面では、どの種目にも積極的に取り組み、がんばっています。記録会では、記録更新を目指し、過去最高記録を意識して取り組み、がんばっています。特に短縄の二重跳びでは、自由時間にも自ら練習し、16回連続で跳ぶことができるようになりました。走り高跳びでは、助走のスピードを落とさず踏み切ることができ、上手です。ドッジボールでは、全身を大きく使ってボールを投げ、楽しんでいます。今後も、様々な運動を楽しんでもらい、運動スキルの向上を図っていきます。

 学習の面では、宿題、公文、英語の学習に取り組んでいます。分からない所があると自分から質問し、がんばっています。公文では、2桁で割るわり算の筆算が一人で解けるようになりました。現在は、分数の学習をがんばっています。今後も、丁寧に学習をサポートし、学力を向上させていきます。

 気になる点は、やりたくないことを後回しにしたり、苦手なことから逃避したりする点です。具体的には、漢字の宿題に対する負のイメージをもっており、なかなか書き始めないことがよくあります。また、書く量の多い日は気が重いようで、「こんなの無理だよ」と言ってやる気がなくなってしまうこともよくあります。このように、その日の気分や課題量で宿題の取り組み方に大きな差が出ており、課題を終えられない日もあります。また、通所日以外は宿題に取り組んでおらず、宿題が溜まってきた頃に、担任の先生から指摘を受け慌てている姿をよく見かけます。宿題はやらなくて済むものではなく、当然取り組むべきものです。これは本児自身も分かってはいますが、「やりたくない」「疲れるから書きたくない」「やる気が出ない」というように自分の気持ちを優先してしまうため、すべきことに取り組めていない状態です。そこで、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)を導入し、心理的柔軟性の獲得を図り、このような状態を改善していきます。ACTは、Hayes,S.C.を中心に確立された臨床行動分析的な心理療法で、行動分析や関係フレーム理論の知見を応用したものです(Hayes,S.C., Strosahl,K.D., & Wilson,K.G.,1999)。今回は、本児との対話を通して、ACTの心理的柔軟性モデルの1つである「アクセプタンス」の体験を得られるよう支援します。具体的には、まず、我々人間は心を持つ以上、苦痛を感じることは避けられないこと、一方、心を持つことで喜びや楽しみを感じることができることを理解してもらいます。苦痛や喜びが自分自身と密接に関わっていることが理解できたら、苦痛を感じた場合に回避をするのではなく、すべきことに優先順位を決め、一つずつ終えられるよう支援をしていきます。回避行動により状況が良くなることはなく、たとえ一時的に大変だったとしても、すべきことを受け入れ前向きに取り組んでいくことが自分にとって得なのだと感じる体験を積んでもらいます。また、がんばっている過程に目を向けて褒めるなどし、やる気を維持していきます。

 本児は、積極的に友達と関わり、とても元気よく生き生きと過ごすことができています。今後も本児の良い面をさらに伸ばすとともに、すべきことにきちんと取り組むことができるよう心のサポートをしていきます。

Juri F.

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