現在の良い状態を維持しつつ、青年期に向けて少しずつ準備を進めていく

 明るく活発な性格で、誰とでも仲良く楽しそうに過ごしています。本児の優しさに惹かれ、本児の周りには自然に友達が集まり、慕われています。自由遊びの時間は、挟みドッジボールをよくしています。ボールを投げることもキャッチすることも飛び抜けて上手で、皆から一目置かれています。また、皆が仲良く遊べるように、遊びながら「今のは○○だからセーフ」「アウト」と審判の役割をしてくれたり、好プレーをした子に「○○君ナイス」と声を掛けてくれたり、場を盛り上げてくれたり、楽しい雰囲気を作ってくれたりします。最近は、遊びに夢中になるだけでなく、周りのこともしっかりと見ることができるようになり、お兄さんらしさが感じられるようになりました。今後もこのような本児の良い面を伸ばしつつ、友達との良い関係を維持することができるよう見守り・助言をしていきます。

 コミュニケーションの面では、大きく成長し、友達との会話がとても上手になりました。ゲームやキャラクター等、相手もよく知っている話題を選んで話し、いつも盛り上がっています。また、話す量と聞く量のバランスが良く、友達との関係の取り方も上手で、仲良く会話を続けることができています。また、友達との関わりの中で嫌なことがあった際、以前はふさいでしまい気持ちを切り替えることができませんでしたが、最近は、多少のことは許容してさっと気持ちを切り替えたり、何が嫌だったのか指導員に話したりすることができるようになりました。時事の発表では、自ら挙手して発表してくれることがあります。「いつ」「どこで」「何があった」の情報を意識し、分かりやすく伝えることができます。Show & Tellでは、予めメモを作り、堂々と発表することができています。発表している物についての説明だけでなく、「ぼくが一番好きなのは…」等、自分の考えを上手に入れられるようになりました。また、友達が発表した後には必ず質問をしてくれます。質問をするためには、発表者の話をしっかりと聞くことも、質問の切り口を見つける質問力も必要で、簡単なことではありませんが、本児は全員に質問をしてくれ、積極的に活動に参加してくれています。「一番難しかった所はどこですか」「(手作りの)エレベーターに何を乗せてみたいですか」等、質問の内容も様々で、良い質問をたくさんしてくれています。帰りの会では、聞く態度を意識することができるようになり、注意を受けることがなくなりました。話し手を見る、しっかりと聞くことを実践し、模範的な姿になっています。今後も様々な活動を通してコミュニケーション力をさらに伸ばしていきます。

 運動の面では、どの種目にも積極的に取り組み、がんばっています。記録会では、1回おきのリフティング50回を合格することができました。また、二重跳びでは、41回連続で跳べるようになり、大きく記録を伸ばしました。記録会後の新記録達成者の名前と回数の発表では、いつも手を挙げ、全員分をスラスラと答えることができます。鳥かごでは、集中力を切らさず、すばやく正確にパスを回すことができます。走り高跳びでは、助走からジャンプへのつながりがスムーズで、とても上手です。チーム対抗戦では、同じチームの子に元気よく声を掛け、場を盛り上げてくれます。ドッジボールでは、積極的にボールを取りに行き、大活躍しています。今後も得意な運動を通して自己肯定感を高めていきます。

 学習の面では、ほとんど時間内に終えられるようになり、学習態度が改善しました。算数や社会の学習では、分からない所を自分から質問し、前向きに取り組んでいます。算数では、繰り返し練習していくうちに「もうこれは簡単」と一人でスラスラと解けるようになります。また、社会では、その問題を解くにはどのグラフの何を見ればよいかが分かるようになってきて、自分で解ける問題が少しずつ増えています。学校のテストでも高得点を取れることが増え、少しずつ学習の成果が出てきています。英語では、1日分の課題をしっかりと取り組み、がんばっています。以前は、テストは1文ずつ行っていましたが、最近は単語の覚えられる量が増え、5文まとめてできるようになりました。綴りも正確に覚えることができ、毎回100点を取っています。また、並べ替え問題が得意で、ほぼ一人で解くことができます。今後も、丁寧に学習支援を行い、学校の授業についていくことができるようサポートしていきます。

 以前気になっていた、話を聞く姿勢や気分の波、気持ちの切り替えについて改善し、気にならなくなりました。現在の気になる点は、学習の準備を始めるまでに時間がかかる点、集中力が途切れやすく友達にちょっかいをかけてしまう点、悪気はありませんが友達に対しやりすぎてしまうことがある点です。これらの点について、声掛けやアドバイスを増やすことで適応的な行動を意識してもらい、改善を図っていきます。今後も本児の良い点を伸ばしつつ、現在の良い状態を維持することができるよう支援していきます。

 ここからは、近々本児にも訪れる、心も体も大きく変化する青年期の特徴やサポートする上で重要な点についてお伝えします。エリクソン(Erik Homburger Erikson)の漸成発達理論では、青年期は、男性らしい又は女性らしい体つきに変化する第二次性徴をきっかけに始まり、自我同一性(アイデンティティ)の達成で終わるとされています。最近は発達加速現象により青年期が早まっています。青年期の主な特徴は、自分は何者なのだろうと感じ始める、心より体が先に大人になってしまうため、心が体についていかず不安定な状態になる、親と自分の考え方が違うことで親との対立が生じる等が挙げられます。青年期には、アイデンティティの危機が訪れますが、自分の役割や価値を見出すことで自我同一性は確立されます。これにより社会への積極的な貢献意識をもつことができるようになります。更に、エリクソンの弟子にあたるマーシャ(James E. Marcia)は、自我同一性の達成状態には4つの区分があることを示しました。1つ目は、自我同一性の達成で、危機を経験し、関与対象を持った状態です。2つ目は、モラトリアムで、危機を経験している最中で、関与対象に近づこうとしている状態です。3つ目は、早期完了で、危機を経験していないにも関わらず、関与対象を持っている状態です。これは、親の方針を受け入れている場合が多く、危機を経験していないため打たれ弱いことが指摘されています。4つ目は、拡散・混乱で、危機の経験の有無に関わらず、関与対象を持っていない状態です。ここで挙げた危機とは、自分の役割や価値を見出せない状態のことで、危機を乗り越えるためには、アイデンティティを選び取る、つまり一つを選びそれ以外を捨てる行動が必要となります。その際、重要となるのは、その選択を自分自身で決めることです。早いか遅いかは問題ではなく、自分の責任として納得して決めることが大切です。したがって、現段階より「○○君はどうしたい?」「○○君はどう思う?」等、日頃から自己決定や意思表示の機会を設け、自分でよく考えた上で物事を決定する練習をしていきます。その際、本児の出した考えを尊重するとともに、どのように考えればよいか分からない時には相談に乗るなどし、自己決定をサポートしていきます。

 思春期以降に出てくる問題行動と親の養育態度、レジリエントな人の共通点について、知っておくとよいと思われる知識を発達心理学の観点からお伝えします。問題行動の一つとして青年期の攻撃性があります。子どもは友達の影響を受けやすく、朱に交われば赤くなると言うように、一緒にいるだけで攻撃性を学んでしまうことがあります。そのような時、周りの大人が子どもの交友関係に目を光らせ、本来進むべき道から逸れないようにしていくことが大切です。本児は、優しく素直で穏やかな性格ですから、そのような話とは無縁ですが、今後もこれまでと同様に見守りを続けていくことが必要です。また、親の養育態度として求められるのは、応答性も統制も兼ね備えた態度です。子どもと話し合いながら子どもの主張を受け入れること(応答性)、ルールをしっかりと示すこと(統制)の両方が必要です。応答性はあるが統制がない場合は甘やかしになってしまい、応答性がなく統制がきついと家庭内暴力などの問題が発生するとされています。本児の場合は、家庭において理想的な養育態度で接せられているので問題ありませんが、今後もこれまでと同様、応答性と統制のバランスを意識しながら接し、健全な親子関係が維持されるようにすることが大切です。また、レジリエントな人(自己回復力のある人)、適応力の高い人の共通点として挙げられるのは、社会的応答性の高さ、柔軟さ(配慮が上手)、母親の代わりに子どもの面倒を見る人の多さ、養育者が子に向ける注意量の多さだとされています。この4点を知っておくことは、今後の本児をサポートする上で重要だと考えられます。

 本支援計画書では、青年期の特徴やサポートする上で重要な点、思春期以降に出てくる問題行動と親の養育態度、レジリエントな人の共通点について、知っておくとよいと思われる知識をお伝えさせていただきました。本児はこの半年間で様々な面において大きく成長しました。今後も本児の良い面をさらに伸ばすとともに、将来のことも見据えながら今できることを考え、サポートしていきます。

Juri F.