運動場面において、思い通りにならないことを柔軟に受け入れる心を育む

 明るく優しい性格で、友達と積極的に関わり、仲良く過ごすことができています。自由遊びの時間は、お絵描きをしたり、友達と一緒に図鑑を見ながら話したりしていることがよくあります。お絵描きでは、動物をよく描いていて、出来上がると自分から見せに来てくれます。可愛らしくほんわかとした雰囲気の絵が多く、とても上手です。また、友達と一緒にポケモンや恐竜の話をよくしています。友達に話を合わせることが得意で、コミュニケーションをとることが上手です。今後も友達との良い関係を維持することができるよう、見守っていきます。

 朝礼では、時事の発表をしてくれることがあります。以前は、思いつくままに話すことがよくありましたが、最近は「いつ」「どこで」「誰が」「何をした」の順番を意識して発表できるようになりました。また、内容を詳しく覚えているものもあり、相手にしっかりと伝わるように話すことができます。友達の発表を聞く際には、予め声を掛けておくことにより勝手に話し始めてしまうことが少なくなりました。

 工作では、いつも丁寧に取り組み、がんばっています。作り方が分からない時は「ここからどうしますか?」と自分から確認することができます。また、作業が丁寧で、根気よく取り組むことができます。「工作好き」「楽しみ」とよく言っており、活動を楽しんでいます。

 運動エフェクトでは、苦手なことにもチャレンジし、全種目に参加してくれるようになりました。ドリブルの記録会では、大きく記録を伸ばして77回できるようになり、とても喜んでいました。集団遊びでは、ルール理解力があり、きちんと守ることができています。鬼ごっこ系の遊びでは、積極的に動き、楽しんでいます。また、鬼になっても諦めることなく追いかけ、がんばっています。また、運動エフェクトのルール「泣かない、怒らない、途中で止めない」を意識することができるようになり、思い通りにならない場面に遭遇しても気持ちの切り替えが少しずつ早くなっています。今後も、運動を通して情緒面の成長を促していきます。

 気になる点は、相手の行為を悪く捉えることが多い点、大げさに反応することが多い点、時間をかけすぎることがある点です。具体的には、ドッジボールで、「自分ばかり狙われる」「僕には全然投げさせてくれない」と、相手がわざと行っているかのような発言をよくします。客観的に見るとそのようにはなっていませんが、本児にとっては相手がわざとそうしているように感じるようです。また、ボールが当たった後に泣いたり、外野への移動に時間がかかったりすることもよくあります。日頃、本児の自由遊びの様子を見ていると、自分のしたいようにできなくても相手に合わせることができており、友達との関係の取り方がとても上手です。自由遊び中にも思い通りにならないことがあると思いますが、泣いたり怒ったりすることは一度もなく、前向きに友達と関わり、楽しそうに遊びを続けています。一方、レクリエーションや運動エフェクトの運動場面においては、思い通りにならないことがあると不適応行動が生じてしまいます。しかし、ドッジボールでボールがたまたま顔に当たってしまった時にも泣かないことから、当てられて痛いから泣いている訳ではなく、そもそも運動が苦手でマイナス思考になりやすいこと、負けるのが嫌というこだわりをもっていることが不適応行動の原因ではないかと考えられます。そこで、思い通りにならないことがあっても柔軟に受け入れ、適応的に振る舞うことができるよう、経験を通して少しずつ慣れてもらいます。弊所は、異年齢の10名程で活動していますが、5~10名という人数は自分の思い通りにならない人数と言われており、適応的な行動を育むことに適した人数です。その都度、その出来事を一般的にはどう捉えるかを伝え、適応的な考え方へ少しずつ変えていくことができるよう行動分析学におけるACT(Acceptance and Commitment Therapy)の観点から支援をしていきます。具体的には、ドッジボールはゲームである以上、当てられて残念な気持ちになることは避けられません。しかし、相手のボールをキャッチできたり、上手くよけることができたり、相手を当てたりすることができれば嬉しい気持ちになります。このように、ドッジボールには残念な気持ちと嬉しい気持ちの両方が備わっていることを理解し、進んで取り組む心理的柔軟性を育んでいきます。その際、本児の感じ方を受け止めた上で、どのように考えるとより楽しく過ごせるかという観点で対話を重ねていきます。また、予め声を掛けて意識してもらい、適応的に行動することができた時には、ほめてよい行動を強化していきます。

 本児は、穏やかで優しく、温かな心をもっています。今後も本児の良い面をさらに伸ばすとともに、気になる点の改善を図っていきます。

Juri F.