落ち着いて座ることができるようになる

 昼食時に意味もなく急に立ち上がったり、座っている時にそわそわしていたりする等、あまり物事に集中できず落ち着きがありません。現在の症状を改善させるためには、一般的に運動が良いと言われていますが、今回は以下の知見を参考にして前頭葉機能を向上させ、症状の改善を図っていきます。
 「難しいバランスコントロールを要する(中略)遊び経験と前頭葉機能には正相関がある(志村・有村,2005)」という知見から、バランスをとる遊びを通して前頭葉機能を向上させていきます。最初は片足立ちや平均台、バランスボール、一本橋歩き等、簡単なものから始め徐々に難易度を上げていきます。また、現時点では、ラダートレーニングのうち、右足→左足→左足→右足という順に足を前に出して進むような、日常の動きと異なり歩くバランスを崩すような動きが苦手です。初めはゆっくりと確実に行うことを意識してもらい、徐々にスピードを上げていけるよう練習していきます。
 「握力と前頭葉機能の関連性は(中略)認められている(志村・有村,2006)」、「握力が育つような経験が脳機能をも育てる可能性が考えられる(志村等,2008)」という知見から、遊びの中に握力を鍛える要素を取り入れていきます。運動エフェクトでは、綱引きや鉄棒のぶら下がり等、ギュッと握る動作のある遊びがたくさんあります。友達と勝負したり、ミッションを作ったり、ストーリー性のあるものにしたりする等、より楽しく活動できるよう工夫していきます。また、戸外活動では、公園に出かけた際、本人の好きなターザンロープや雲梯等で楽しく遊んでもらう中で、自然に握る動作を増やしていきます。好きな遊びは何度も繰り返し取り組むので、より効果があると考えられます。
 「屋外での遊び経験が豊かであると、筋力(握力)や瞬発力、巧緻性が高い関係が読み取れた(志村等,2008)」、「体を使った屋外での遊び経験は前頭葉機能とも、運動能力とも正の関連を示す傾向にあった(志村等,2008)」という知見から、戸外活動で公園遊びを積極的に取り入れていきます。友達とかけっこや鬼ごっこをする等、広い場所で思いっきり走ること、様々な種類の遊具に挑戦すること等、公園ならではの良さを生かしながら、楽しく身体を動かす経験を積み重ねてもらいます。
 これらの実践を行う際は、本人が楽しい、もっとやりたいと感じるよう配慮していきます。また、ほめてやる気を引き出しながら成長を促していきます。

引用文献

志村正子・原田直子・平川慎二・有村映子・北川淳一・山中隆夫・野井真吾(2008)「幼稚園児における運動・遊び経験と運動能力および前頭葉機能との関連性―横断的検討ならびに遊びによる介入―」『発育発達研究』37、25-37

Juri F.