適応的な振る舞い方を知り、実行することができる

 明るく人懐っこい性格で、自分から指導員や友達に話しかけ、楽しそうに過ごしています。カプラで大きな建物を作った時に「すごいのができたよ。見て見て」と嬉しそうに言いに来てくれたり、バランサーで遊んでいる時に「100秒までできるようになったから数えてて」と言いに来てくれたりします。「○○君が作ったのと同じのを作りたい」とカプラでタワーを作っていた時には、何度崩れても諦めず、自分の背よりも高いタワーを作ることができ、誇らしげにしていました。「すごいね」と声を掛けられる嬉しさが人一倍強く、もっとすごいものを作りたい、もっと上手になりたいという気持ちが表れています。また、仲良しの友達に過剰に接触することが少なくなり、友達との距離の取り方が上手になってきました。本児は優しく、友達とトラブルになることはなく、仲良く過ごすことができています。
 運動エフェクトでは、一つ一つの種目に丁寧に取り組み、がんばっています。記録会では、V字ドリブル100回を合格することができ、喜んでいました。しっかりとVの形になるよう、ボールを上手にコントロールすることができるようになりました。現在は、次の課題の2個同時ドリブルに挑戦中です。初めは難しかったことが練習を繰り返すことでできるようになる経験を積むことができており、自由時間にも自分から練習する前向きな姿を多く見かけます。鉄棒の逆上がり練習では、肘を曲げた状態を維持できるようになり、少し前進しました。集団遊びでは、鬼ごっこ系の遊びが好きで、楽しそうに取り組んでいます。
 学習の面では、1日分の課題を時間内に終えられるようがんばっています。最近は、途中で席を立ったり、寝転がったりすることなく、机に向かうことができるようになりました。また、周りの声や音に過剰に反応することもなくなり、集中力もついてきました。
 数か月前は、「(運動エフェクトで)○○君と一緒のグループは嫌だ」「もっと(運動の)できる子とやりたい」等、不平不満を言ったり、活動に参加しなかったりする点、ドッジボールでボールを当てられてしまう等、嫌なことがあった時にマスクを引きちぎってしまう点、その時の気分により、発表の声をわざと小さくし、正すよう声を掛けられても素直に応じられない点が気になっていましたが、現在はこれらの不適応行動は改善されました。以下の3つの支援を継続し、現在の良い状態を維持・定着させることができるようにしていきます。1つ目は、プロンプト(正反応が起きる確率を高める補助的な刺激)を付加し、成功体験を増やします。本児は、適応的な行動のレパートリーを持っていながらも、それが発現しない場面が多々あります。この弁別刺激が機能していない状態を改善するために、さらにプロンプトを増やし、適応的な行動を具体的に示すことで、適応行動を引き出していきます。2つ目は、60秒ルールに加え、トークンと連動させ、自発的行動を引き出します。60秒ルールとは、ある行動をとった直後に快が得られれば、その行動が強化されることです。即時強化の60秒ルールは現時点でも行っていますが、さらに効果を高められるよう、今後はトークンとも連動させていきます。行動してから強化子が得られるまでに時間がかかっても、反応形成が行われることを間接化と言います。具体的には、おもちゃが欲しいからお小遣いを貯める、ゲームをしたいから早く宿題を済ませる等があります。このように、間接化は、他者から言われてからするのではなく、子どもが自分からしていることに特徴があります。この間接化を利用して自発的行動を引き出し、さらに効果を高めていきます。3つ目は、行動の重要性を言語化し、ルール支配行動を身につけてもらいます。まだ、ルールの重要性が分からず、その時の気分次第でルールを守ることができなくなってしまいます。弊所では、運動エフェクトにおいて「泣かない・怒らない・途中で止めない」というルールがあります。予め決められたルールに沿って行動することができるよう事前に声を掛けていきます。
 本児は、上手になりたい、もっとできるようになりたいと向上心をもち、様々なことにチャレンジすることができています。今後もこの気持ちを大切にしながら、さらに良い点を伸ばしていくことができるよう支援していきます。また、現在の良い状態を維持することができるよう、適応的な振る舞いを強化し、定着するよう支援していきます。

Juri F.