遊びを通して生活技能の向上を図り、楽しみながらできることを増やす

 人懐っこく穏やかな性格で、ニコニコと楽しそうに過ごしています。最近は、機嫌よく声を出すことが増えており、新しい環境に馴染むことができました。自由遊びの時間は、太鼓のおもちゃで音楽を聴くことが好きです。音楽を聴きながら、太鼓を叩くような動きをして楽しんでいます。曲が止まるとすぐに次の曲をかけ、長い間聴いています。また、ボール遊びに誘うと、一緒に遊んでくれます。指導員と向かい合って座り、両手でボールを転がしたり、少し離れた場所にあるかごに向けてカラーボールを投げ入れたりします。お手本を見せると上手に真似し、楽しんでいます。他には、「よーいドン」と言って、手をつないでかけっこをしたり、車のおもちゃを手で動かしたり、手遊びをしたりして遊んでいます。また、太鼓の電源を入れてほしい等の「○○してほしい」という要求は自分から動作で伝えることができています。今後も、好きなことを十分に楽しんでもらったり、様々な遊びに誘ったりし、楽しいことを増やすとともに、人との関わりを楽しんでもらいます。

 戸外活動では、公園に出掛けました。サリオパークでは砂遊びをし、サラサラの砂の感触を楽しんでいました。感触が気に入ったようで、長い間続けていました。また、体力があり、たくさん歩いても足取りが軽く、楽しそうに過ごしていました。

 気になる点は、日常生活動作が難しい点です。課題分析シートを用いて、日常生活動作を細かく分解した各項目について、一人でできること、声掛けのみでできること、部分的に介助が必要なこと、全介助が必要なことの4段階で評価しました。この半年間、生活面の様々なことにチャレンジしてもらっており、少しずつ力を伸ばしています。例えば、トイレのドアの開閉、靴を下駄箱にしまうことが声掛けのみでできるようになりました。また、ヨーグルトの蓋を開けたり、スプーンで食べたりする等、食に関することは、自分からやってみようとする姿が多く見られ、部分的な介助でできるようになっています。今後、声掛けのみでできることは一人でできるように、部分的に介助が必要なことは声掛けのみでできるように、全介助が必要なことは部分的な介助でできるように、一つ上の段階へステップアップできるよう支援していきます。具体的には、応用行動分析の手法の一つである課題分析を用いて行動形成を行います。課題分析とは、遂行が求められる複雑なスキルを教授できるより小さな単位に分解し、課題を効果的に完了させるために必要な行動順序を確定する手法です(Cooper,J. O.,Heron,T.E.,& Heward,W. L.,2013)。応用行動分析の課題分析において行動を小さな単位に分解する際には、目に見える単位によって分解します。この課題分析の方法に加えて、その行動要素がどのような知識や技能から成り立っているのかを分析した上で、子どもがその活動や学習課題のどの部分につまずいているのか細部で捉えた実態把握を行うことができれば、複雑に見えるスキルのどの遂行部分につまずきがあるのか、より細かい要素で捉えることができ、その情報を基によりよい支援に結びつけられると考えられます(村岡玲子・霜田浩信,2021)。例えば、「靴を履く」を課題分析すると、「下駄箱から自分の靴を取り出す、座る、靴を左右正しく置く、片方の靴を持つ、マジックテープをはがす、靴の口を広げる、足先を靴に入れる、かかとを靴に入れる、マジックテープをとめる」というように9つの動作に分けられます。各動作について4段階の評価をし、何ができて何ができないのかを正確に把握した上で支援を実施します。その際、本児が自分でやってみる機会を確保し、自分でしようという気持ちを高めていきます。また、本児に手を添えて一緒に動作を行う身体ガイダンスや、声を掛けたりお手本を示したりする等、次の行動の手がかりを示すプロンプトを用いて、自分でやってみることをサポートしていきます。最終的に靴を履く、おやつを食べる等の生活動作が一人でできるようになるよう、その行動の中に含まれる動作を一つ一つスモールステップで習得してもらいます。また、遊びの中にも生活技能向上を目的とした活動を取り入れ、楽しく遊びながら日常生活動作を身に付けてもらいます。遊びに取り入れる利点は、やってみる機会を増やすことができる点、遊びの幅を広げられる点です。例えば、お菓子の袋を開ける動作は、おやつの時間の一度しか練習できませんが、紙をちぎる遊びを取り入れることで、袋を開ける動作と似た動作の練習を繰り返しすることができます。他には、ファスナーを開けたり閉めたりすること、袋から物を取り出したりしまったりすること、小さいものをつまむこと、スプーンですくうこと、シールを貼ること等、遊び感覚で日常生活動作の練習をしていきます。また、このような物を操作する微細運動だけでなく、歩く、ボールを投げる等の粗大運動の遊びも取り入れ、遊びの幅を広げていきます。

 本児はニコニコと機嫌よく過ごしていることが多く、愛嬌があります。今後、自分でできることを増やしたり、遊びの幅を広げたりし、より楽しく過ごすことができるよう支援していきます。

引用文献

村岡玲子・霜田浩信(2021).発達障がい児における課題分析に基づく実態把握と支援の検討 群馬大学共同教育学部紀要 70,145-163.

Juri F.