分化強化を行い適応的な行動の割合を増やすとともに、適応的な行動をほめて自己肯定感を高める

 人懐っこい性格で、アニメのストーリー展開や面白い場面について詳しく話してくれることがよくあります。「(キャラクターの)○○って知っていますか?」と相手がどこまで知っているか確認しながら話を進め、必要に応じて説明を追加する等、相手に伝わるように分かりやすく話すことができます。

 運動エフェクトでは、どの種目も一生懸命取り組み、がんばっています。繰り返し取り組むことで各種目のルール理解が進み、感情を高ぶらせることがほとんどなくなりました。また、多少ルール変更があっても「分からないよ」「聞いてないよ」と言わず、そのルールに合わせて対応できるようになりました。得意な種目はラダートレーニングで、リズムよく正確に行うことができます。鬼ごっこ系の遊びでは、積極的に動き、がんばっています。また、鬼を代わってと言う子がいると、自ら手を挙げて鬼を代わってくれることが多く、優しくしてくれます。ドッジボールでは、身のこなしが上手で、ボールを上手によけることができます。最近は、ボールを投げることが増え、より楽しそうに活動しています。

 学習の時間は、切り替えが早く集中して取り組むことができます。公文では、コツコツ取り組み、少しずつできることが増えています。まだ公文で間違えたり、分からない所があったりすると感情を高ぶらせてしまうので、本児の負担感を減らすことができるよう丁寧な支援を行っていきます。また、必要に応じて取り組む量や難度を柔軟に変更する等、できる範囲で取り組んでもらいます。

 気になる点は、不適切発言が多い点、感情の高ぶりを抑えることが難しい点です。本児は、日頃、友達に対して、「デブ」「ブタ」「バカ○○(友達の名前)」等と何度も言っています。注意すると「事実だから」「どうして言ったらいけないのか分からない」と言って、聞く耳を持ちません。また、指導員に対して「くそばばぁ」「うるせー」「死ね」と暴言を吐いたり、謝るよう促された後に「やだね」と口答えしたりします。また、学習の時間に公文の直しや分からない問題があると、暴言を吐いたり、壁を蹴ったり、床を叩いたりし、乱暴になります。そこで、これらの点を改善するため、以下の支援を行います。まず、問題行動の三項随伴性を特定し、問題行動を維持している機能を推定します。注意しなければならないのは、問題行動にも強化の随伴性があること、同じトポグラフィ(行動形態)でも機能が異なる場合があることです。問題となる行動が同じでも機能が異なれば、支援の方法も変えなければなりません。代表的な行動の機能は、要求、逃避、注目、身体感覚の4つに分類されます。本児の場合、行動の機能は逃避だと考えられます。上手くできない自分を受け入れることができないため、感情を高ぶらせることで自分と向き合うことを避けていると考えられます。また、防衛機制の観点から考えると、投影性同一視が当てはまると考えられます。防衛機制とは、受け入れ難い状況や不快な出来事にさらされた場合に生じる心の葛藤を、無意識的に解消しようとする自己防衛のはたらきです。一方、投影性同一視とは、自分の中に抑圧している感情を相手に転嫁することです。例えば、自分は駄目だなと思っていると、他人に対し駄目な人と言います。よって、本児が友達に対して悪口や文句を言うことも自己肯定感の低さが関係していると考えられます。そこで、本児の得意な部分や適応的な行動に注目し、ほめることによって自己肯定感を高めていきます。また、感情を高ぶらせない環境を整え、安心して過ごすことができる環境、友達の悪口を言わなくても済む環境を整えていきます。本児は、運動エフェクトにおいては、上手くできなかったり思うようにいかなかったりしてもイライラせず、適応的に行動できるようになっています。更に、今後は、ポジティブ・ビヘイビア・セラピーの観点から分化強化を行っていきます。分化強化とは、不適応行動を消去し、適応的な行動をした場合や、行動を改めることができた場合にほめられる経験を積み重ねることです。不適応行動を消去すること、適応的な行動を増やすことの両面にはたらきかけ、適応的な行動の割合が増えるよう支援していきます。また、ここまでの支援技法である認知行動療法における認知的再体制化は、物事の捉え方を変化させていくことに効果が見られるため、今後も継続していきます。

 本児は、少しずつ感情コントロール力がつき、運動エフェクト中に感情を高ぶらせることはほとんどなくなりました。また、最近は自身の課題を認識して気を付けられるようになってきており、「今日は暴言を一度も言っていません」と報告してくれたり、これまで悪口を言ってきた子に対し「○○君って○○がすごいよね」など、その子の良い面を口にすることが多くなったり、善行行動をとることが増えたりしています。今後も良い点をさらに伸ばすともに、気になる点を改善することができるよう支援していきます。

Juri F.

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