認知療法を用いて物事の捉え方を少しずつ変え、不適応行動を減らす

 明るく人懐っこい性格で、指導員や友達に自分から話しかけ、仲良く過ごすことができています。トムとジェリー等、好きなアニメについてストーリー展開を詳しく教えてくれたり、面白かった場面や感想も併せて話してくれたりします。相手に共感を求めたり、相手の話に共感したりし、相互コミュニケーションが上手です。

 運動面では、どの種目にも一生懸命取り組み、がんばっています。繰り返し取り組むことにより、ルールに沿った動きをすることができています。本児自身も「これは分かる」「これはやったことがある」という発言が増えており、少しずつルールが分かるようになっている実感があるようです。鬼ごっこ系の遊びでは、「鬼をやりたい」と手を挙げることが多く、積極性が出てきています。ドッジボールでは、ボールを遠くまで投げること、ボールに当たらないよう身をかわすことが上手で、自信をもっています。

 学習面では、切り替えが早く集中して取り組むことができています。公文にコツコツ取り組み、2桁で割るわり算の筆算ができるようになりました。分からないところは自分から質問し、がんばっています。

 気になる点は、上手くいかないことがあると怒る点です。学習中や運動中、分からなかったり上手くいかなかったりすると怒り、壁を蹴ったり頭を叩いたり文句を言ったりしてしまいます。このような状態では、周りからの印象が良くないので、これらの行動を少しずつ減らしていく必要があります。認知療法の考え方では、不適応行動の背景には不適応な認知が関与していることが多いとされています。本児の場合、失敗や間違いに過剰に反応したり、「分からなかった」「知らなかった」と怒ったりする背景には、自分にとってネガティブな情報を上手く処理できていない可能性が考えられます。失敗や間違いをしない完璧な人間などいませんし、いつも自分の思い通りに上手くいくとも限りません。こうありたいという願いと、そう上手くはいかない現実との差を認識し、上手くいかなくても受け入れていく柔軟な心を身に付けられると、より適応的に行動することができるようになります。そこで、認知療法を用いて物事の捉え方を少しずつ変え、不適応行動を減らすことができるよう支援していきます。

 認知療法とはベックによって体系化されたもので、認知の歪みを標的として、スキーマ、自動思考の変容を通して問題解決を図る心理療法です。自動思考とは、自分の意思とは関係なく自動的に思い浮かぶ思考のことです。今回は、以下の7つのステップに従い支援していきます。(1)困っていることを明確にします(2)どのような場面でその問題が生じるのか把握します(3)その際に生じている自動思考を確認します(4)その自動思考の感情や行動への影響性を調べます(5)自動思考が適切かどうか評価します(6)適切でない場合、別の考え方ができないか検討します(7)別の考え方の効果を検証します。

 まず初めに、認知変容後のターゲットを決めます。それは、大多数の同年代の子どもの認知とします。しかし、そのターゲットは目標とするのではなく、おおよその目安とします。また、その差を問題視するのではなく、上手く機能しているかどうか、つまり、本児の困り感が減るかどうかを判断基準とします。そして、認知変容を促していきます。認知の修正を第一の目的とするのではなく、ターゲット行動への変容に対する影響性を確認しながら、少しずつ認知の変容を行っていきます。認知の変容は目標・目的ではなく、手段です。認知の変容によって、結果的に上手く機能するようにし、不適応状態を改善していきます。その際、認知行動療法の主要技法の一つである認知的再体制化を用います。認知的再体制化は、「自分はこう考えやすいが、こう考える人もいるんだな」と柔軟な考え方をもってもらうことです。その際に重要なことは、今ある考えを別の考えに置き換えるのではなく、抱えている問題にその考え方が機能したかどうか、そのように考えることで気持ちが楽になったかどうかを考えることです。例えば、「ルールが分からない」「どうしてぼくは分からないんだ」という状況に対し、「そう考えるのではなく〇〇のように考えるといいよ」等の、認知の変容を目的としたアドバイスを送るのではなく、認知を変えることはメリットになる、気持ちが楽になる等、本児の困り感に機能することを目的したアドバイスを送り、その結果、本児自身が自ら認知を変容させていくように接していきます。今後、不適応な行動が生起した際、本児と一緒にどのように考えればよいかを検討し、適応的な考えの出し方を学んでもらいます。また、不適応行動が生じた際の対話を通して、ネガティブなものをポジティブにすることだけでなく、ネガティブな度合いを少し小さくしたり、ポジティブな度合いを少し大きくしたりするだけでも大きな変化であること等、小さな変化にも目を向けられるようにしていきます。そして、物事の捉え方が変わると結果も変わることに気づくメタ認知を身につけてもらい、ネガティブな情報を適応的に受け止められる柔軟な心を育んでいきます。

 本児は「今日は怒りませんでした」と自ら報告する等、素直な心をもっています。今後も良い点をさらに伸ばすとともに、認知療法を用いて物事の捉え方を少しずつ変え、気になる点の改善を図っていきます。

Juri F.

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