物事を前向きに捉え、適応的に振る舞うことができるようになる
明るく素直な性格で、様々な活動に積極的に取り組み、楽しそうに過ごしています。自由遊びの時間は、ボール遊びをすることが好きです。以前は、友達との遊びを促しても「ぼくはやらない」と断ることがよくありましたが、最近は挟みドッジボールや鬼ごっこ系の遊び等、多人数の遊びに仲間入りすることが増え、交友関係が広がりました。できることが増えて自信がついてきたことで、友達とも積極的に関わるようになってきていると考えられます。また、友達や指導員に「一緒に○○しよう」と本児から声を掛けてくれることが多く、キャッチボールやバレーボールをして遊んでいます。「○○君と○○君がチームね」「3点入った方が勝ち」等、ルールを考えて伝えてくれます。キャッチボールでは、「投げるのがもっと上手になりたい」と練習し、少しずつコントロール良く投げることができるようになってきており、がんばっています。
コミュニケーションの面では、日常的な会話において大きく向上しました。以前は次々に話題を変えてしまっていましたが、最近は1つの話題を長く続けられるようになりました。また、本児が話したことに関して「電車に乗って何をしたの?」「お祭りで何を食べたの?」等の質問に適切に答えられるようになり、成長を感じています。また、Show & Tellにも毎週取り組んでくれています。家で作った物や、好きな本やおもちゃ、家族で出掛けた思い出等、様々なジャンルの発表をしています。以前は、物の色や大きさ、形等の見た目について思いついたままに話していましたが、原稿を予め作成するようになってからは、話す内容が向上しました。具体的には、工作の発表では、作るのが難しかった所や工夫した所、改良した所を具体的に伝えたり、使い方を説明したりすることができるようになりました。思い出の発表では、どこで何をしたかを詳しく説明したり、感想を言ったりすることができるようになりました。ここまで経験を積み重ねてきたことで少しずつ向上しているので、今後も継続してもらい、さらに力を伸ばしていきます。
運動エフェクトでは、どの種目も積極的に取り組み、がんばっています。短縄の前跳びでは、以前はタイミングが合わず跳べませんでしたが、最近はリズムよく連続で跳ぶことができるようになりました。上手くできるようになって自信がつき、「もっとできるようになりたい」と自由遊びの時間にも練習していることがあります。得意な種目は走り高跳び、跳び箱、長縄しりとりです。走り高跳びでは、助走のスピードを落とすことなく跳ぶことができており、タイミングの取り方が上手です。跳び箱では、縦5段を勢いよく跳び越え、まだ余裕がある程です。長縄しりとりでは、語彙が豊富で、最後まで残ることが多くあります。また、ゆっくりとした動きができるようになったり、焦らず落ち着いて取り組むことができるようになったりし、抑制力が伸びました。ラダートレーニングでは、多くのバリエーションがありますが、すべて正確に行うことができています。また、開いて閉じてや短縄の練習では、動きを確認するために1動作ずつ止めながら行う際、勝手に次の動きをしてしまうことがなくなりました。以前は苦手なことは勢いにまかせたり、「できない」と止めてしまったりすることがありましたが、最近は、落ち着いて取り組むことができるようになり、心の成長を感じています。集団遊びでは、ルールに沿って楽しむことができています。ドッジボールでは、ボールをキャッチすることが得意で、チームの子から頼りにされています。最近はボールを投げることも上手になってきて、相手に当てられるようになりました。「早くドッジボールやりたい」と毎日楽しみにしてくれています。今後も様々な運動に取り組んでもらい、運動能力をさらに向上させていきます。
学習の面では、切り替えが早く、すぐに準備をして自分から始めることができています。公文では、2桁で割るわり算の筆算の練習をしています。この単元は「分からない」という子が多い中、一人で解けるようになりました。できるようになりたいという気持ちを強くもっており、前向きに取り組むことができています。英語は、「今日英語だ。やったー」と毎週楽しみにしてくれています。英語の学習では気がそれてしまうことが少なく、その日の課題に集中して取り組むことができています。今後は、取り組み内容を学校の授業に沿ったものに変えて学習のサポートをしていきます。予習して既有知識を増やすことにより、学校の授業に前向きに取り組めるようにしたり、繰り返し練習することにより学習内容の定着を図ったりし、学校のテストでしっかりと点数をとることができるよう支援していきます。
気になる点は、細かなことですが、以下の5点です。1つ目は、運動エフェクトのドッジボールで負けそうになると「ああ、もう負け決定だ」等の不適切発言を繰り返したり、負けた時に泣いたりする点です。「勝ちたい」という気持ちを人一倍強くもち、勝ちを目指して一生懸命取り組めることは良いことですが、ゲームである以上いつも勝つことができるとは限らないと柔軟に考えられるようになることも大切です。心はプラスとマイナスが綯い交ぜになって発達すると言われています。勝って嬉しい時と負けて悔しい時の両方を繰り返し経験してもらうことで心の発達を促し、「負けたけど、がんばった」「悔しいけど、今度は勝てるようにがんばろう」と前向きに捉え、適応的に振る舞うことができるようにしていきます。
2つ目は、自由時間にドッジボールをしている時に、ボールを当てられて外野になった途端に止めてしまう点です。運動エフェクトの時はそのまま続けられますが、自由時間の時は止めてしまい、一緒に遊んでいた子から批判を受けていることがよくあります。本児はお構いなしで、しばらく経ってまたやりたくなった時に戻ってくるということを繰り返しています。友達と良い関係を維持するためには、自分勝手に行動するのではなく、ルールに沿って行動ができるようになることが大切です。運動エフェクトの時のように、「泣かない、怒らない、途中で止めない」と予めルールを提示し、意識してもらいます。また、現時点では、本児自身、「ボールをキャッチするのは得意だけど、ボールを投げるのは上手くできない」と口にすることがあり、ボールを投げることに自信があまりないようです。ボールを投げることに自信がもてるようになれば、外野になった途端に止めてしまう不適切な行動は自然に減っていくと考えられます。ボールを投げることは、他の運動と同様、経験を積み重ねることで少しずつ上手になっていきます。個別にキャッチボールの練習をする等、遊びを通して機会を提供し、経験を積み重ねられるようにします。その際、がんばっているところを励ますこと、上手になったところをほめることを繰り返し、少しずつ自信をつけていきます。
3つ目は、学習時に気がそれやすい点です。他の子の声や周りの音に敏感に反応して手が止まったり、友達と一緒にふざけたり、友達の良くない行動を指摘したりすることが多くあります。声を掛けるとすぐに取り組んでくれますが、何度も繰り返し、その日の課題が終わらないこともあります。特性上、反応しないようにすることは難しいため、一旦気がそれてしまっても短時間のうちに元の状態に戻ることができるようにします。具体的には、友達と一緒にふざけること、友達の良くない行動を指摘することを減らし、自分の課題に集中できるようにします。周りが気になるのは、逃避の機能があることを伝え、意識的にこのような行動を抑えることができるようにします。また、本児の「ルールをしっかりと守ることができる」という良い点を生かし、予め行動の重要性を言語化し、ルールとして伝えていきます。また、学習環境を整え、集中しやすくなるよう配慮します。
4つ目は、Show & Tellの際、質問に対して関係のないことを話してしまう点です。日常的な会話は、質問に対して上手に答えられるようになり向上しましたが、Show & Tellの場ではまだ力を出し切れていないようです。Show & Tellの後には、友達からの質問を受ける時間がありますが、質問されたこととは関係のないことを話してしまいます。Show & Tellでのやりとりを通して、コミュニケーションにズレを生じさせないとはどのようなことなのかを学んでもらいます。
5つ目は、文法の使い方の間違いが多い点です。例えば、「A君に○○された」と報告する際、本児は「○○(本児の名前)が…」と言い始めることが多く、「○○(本児の名前)がA君に○○した」と、友達がしたことを自分がしたかのような言い方になってしまいます。本児のことをしっかりと理解した環境であれば誤解は生じませんが、別の環境では濡れ衣を着せられてしまうことにもなりかねないため、改善する必要があります。しかし、文法を使いこなすことは簡単ではないため、本児への影響性を考えながら、話すことに対し抵抗感をもってしまわないよう伝え方に配慮し、支援していきます。
本児は様々な活動に積極的に取り組み、ぐんぐん力を伸ばしています。今後も良い面をさらに伸ばすとともに、気になる点の改善を図ることができるよう支援していきます。
Juri F.