スモールステップで練習を行い、少しずつできることを増やす

 素直で穏やかな性格で、落ち着いて過ごすことができています。自由遊びの時間はボールやブロックで遊ぶことが好きです。ボール遊びでは、ドリブルをしたり、指導員が投げたボールを手で打ち返したりして遊んでいます。弾みづらい小さなボールでも上手にドリブルすることができ、とても上手です。ブロック遊びでは、ある程度横につなげてから、上方向へつなげていくことを楽しんでいます。以前は、不安定で差し込みづらいと止めてしまうことがありましたが、最近は下のブロックを手で支えながら差し込む等、上手につなげられるようになりました。

 生活の面では、個別の声掛けにより、すべきことを理解し、ほとんどのことを自分で行うことができています。昼食の準備や帰りの準備等、いつも同じ流れのことは一つ一つ具体的な声掛けをしなくてもできるようになりました。また、おもちゃの片付けでは、個別に声掛けをしなくても、自分からブロックを拾ってかごに入れてくれることが増えています。現時点、自分で行うことが難しいことは、学校の制服を包む風呂敷を結ぶことです。まずは、一重結びができるようになることを目標に、応用行動分析の手法の一つである課題分析を用いて行動形成を行っていきます。課題分析とは、遂行が求められる複雑なスキルを教授できるより小さな単位に分解し、課題を効果的に完了させるために必要な行動順序を確定する手法です(Cooper,J. O.,Heron,T.E.,& Heward,W. L.,2013)。応用行動分析の課題分析において行動を小さな単位に分解する際には、目に見える単位によって分解します。この課題分析の方法に加えて、その行動要素がどのような知識や技能から成り立っているのかを分析した上で、子どもがその活動や学習課題のどの部分につまずいているのか細部で捉えた実態把握を行うことができれば、複雑に見えるスキルのどの遂行部分につまずきがあるのか、より細かい要素で捉えることができ、その情報を基によりよい支援に結びつけられると考えられます(村岡・霜田,2021)。今回は「一重結びをする」という行動を課題分析し、4つの行動要素に分けて練習を実施していきます。具体的な行動要素は以下の通りです。①2本のひもを左右の手で一本ずつ持つ。②左右の手を交差してバツ印を作り、そのまま離す。③左手で交差している部分をつまみ、右手で右側のひもを持つ。④右手のひもを交差している部分の下をくぐらせる。⑤2本のひもを持ち、横方向へ引っ張る。これらの行動要素を身体ガイダンス、モデリング、プロンプトを用いて練習を進めていきます。第一段階は、結び方が分かりやすいよう、形状を維持することができるモール2本を使います。そして、第二段階ではモール1本とひも1本、第三段階ではひも2本、第四段階では風呂敷をそれぞれ使います。このように、徐々に難度を上げながらスモールステップで1つずつ順に練習し、一人でできるようにしていきます。

 運動の面では、ボールを使った種目が好きです。ボールを手や足でドリブルすることが得意です。ボールのコントロールが上手で、楽しそうに行っています。集団遊びでは、ルールをその都度教えてもらったり、指導員と一緒に行ったりしています。ハンカチ落としでは、だいたいの動きが分かるようになり、友達にタッチされると自ら立ち上がり、走り出すことができるようになりました。鬼ごっこでは、ニコニコしながら友達を追いかけ、楽しんでいます。公園では、大きなネットの遊具に一人で上ることができるようになりました。遊具を怖がることが少なくなり、色々な遊具に挑戦できるようになったことで、公園遊びをより楽しめるようになりました。

 学習の面では、学習の時間になると自分から机の所に来てくれます。鉛筆を持つ際、もちかたくんを使用していますが、正しい位置に自分で指を添えられるようになりました。まだ力を入れることは難しいので、様々な運筆練習に取り組み、少しずつ慣れてもらいます。また、枠からはみ出さないように色塗りをする等、身体ガイダンスを伴わせながら細かい動きや力の入れ方を楽しく学んでもらいます。また、ほとんどのひらがな・数字は読むことができますが、読み間違いが多く見られます。数字は、読み間違えた時に「よく見てね」と声を掛けると正しく読むことができますが、ひらがなは難しいことがよくあります。例えば、「く」「る」「ま」の3枚のカードから「『る』はどれ?」と尋ねると「ま」を選ぶ等、まだしっかりと覚えてられていないひらがなもあります。本児がどのくらい読むことができるか把握しながら、ひらがなや数字を正しく読むことができるよう少しずつ練習していきます。

 本児は落ち着きが増し、様々なことを学ぶことができる状態に成長しています。今後、遊びを取り入れた学習支援、生活動作の練習を通して、できることが増えるよう支援していきます。

引用文献

村岡玲子・霜田浩信(2021). 発達障がい児における課題分析に基づく実態把握と支援の検討 群馬大学共同教育学部紀要 70,145-163.

Juri F.