その場に合った行動をその都度伝え、適応行動を増やすー問題行動を消去し、適切な行動を強化する分化強化による支援ー

 ここまでの支援により、様々な面で成長が見られ、落ち着いて過ごすことができる日が増えています。自由遊びの時間は、本を読んだり、おままごとをしたり、お絵描きをしたり、音楽を聞いたりして過ごしています。一人で遊んでいることが多いですが、時々指導員とキャッチボールをして遊ぶことも出てきています。また、指導員に「線路作って」と頼んだり、ゲームの広告を友達が持っていると「見せて」と頼んだりする等、必要な時には自分から声を掛けることができます。また、男性指導員に懐いており、「一緒に遊ぼ」「こちょこちょして」と言ったり、甘えてくっついたりする等、本児からの接近行動が増えており、療育の土台となる信頼関係を築くことができています。今後も「一緒に遊ぶと楽しいな」「もっと一緒に遊びたいな」と感じてもらえるよう、人と関わることの楽しさを感じてもらえるよう接していきます。

 運動エフェクトでは、毎回全種目に参加できるようになりました。準備運動等、繰り返し行うものは声掛けのみでできる日が増えています。号令に合わせてしっかりと行うことができ、真似をすることが上手です。得意な種目は綱引きやジャンプ系の種目です。タコジャンプでは、棒が自分の所に回ってくると「キャー」と言いながらジャンプしたりしゃがんだりし、楽しんでくれています。キャッチボールでは、正面に緩やかなボールが来た時はキャッチすることができるようになりました。今後も様々な運動を楽しんでもらい、できることを少しずつ増やしていきます。

 学習の時間は、自ら学習の準備をすることができています。途中で気がそれることは多いですが、その都度声を掛けると少しずつ進めることができています。漢字の宿題では、いつも丁寧に書いており、がんばっています。今後も落ち着いて学習に取り組むことができるよう、支援していきます。

 気になる点は、指示に応じることや行動の切り替えが難しい点です。「運動するよ」等の声掛けに応じることができず、そのまま遊びを続けていることが多くあります。この点を改善するため、現在、問題行動を消去し、適応的な行動を強化する分化強化の手続きを行っています。問題行動を減らすだけでは解決にならないため、好子出現強化(正の強化)で適応行動の学習を一緒に進めていくことが大切です。良くない行動を減らす手続きは、刺激統制法を用いています。刺激統制法とは、刺激を本人の周りから撤去することです。本児は、運動エフェクト自体は楽しく取り組むことができていますが、活動よりも遊びの方を好んでおり、外部からのサポートなしでは活動に参加することができていません。また、一旦活動から離れてしまうと再び活動に戻ることも難しいです。そのため、活動を続けられるよう工夫することが必要です。例えば、その日の運動種目に本児の好きな種目を入れる等、本児に合わせた活動プログラムを用意します。また運動の時間には、おもちゃの置いてある部屋の扉を閉め、活動に意識を向けやすくします。良い行動を増やす手続きは、プロンプトを用いたり、最近接発達領域の考えに基づいてサポートしたりしています。プロンプトとは、正しい行動を促すきっかけとなる補助的な刺激のことです。プロンプトには、言語的指示、視覚提示、モデリング、身体的誘導(マニュアルガイダンス)があります。プロンプト(行動を生起させるヒント)を弁別刺激として、正しい行動が生起した際に強化することで行動を形成することができます。基本的には言語的指示を用いて、その時にすべきことを明確に伝えていますが、言語的指示や視覚提示、モデリングでは適応的な行動を引き出すことが難しい場合は、指導員が並ぶ場所に連れていったり、ドッジボールなどの集団遊びで一緒に動いたりする等の身体的誘導を行っています。プロンプトがなくても行動が生起するようになれば行動が形成されたことになります。現時点は、ほとんど身体的誘導が必要な状態ですが、本児の好きな種目に関しては言語的指示のみで指示に応じることができるようになりました。できるようになったことは徐々にプロンプトを減らし、自分でできることを増やせるよう支援していきます。また、最近接発達領域とは、子どもだけではできないが、大人の適切なサポートがあればできる領域のことです。そのような領域を用意し、子どもに適切な経験の機会を提供することによって発達を促すことができます。様々な行動を、本児が既にできること、もう少しでできそうなこと、まだ難しいことに分類し、もう少しでできそうなことを一緒に行うことで、できることを増やしていきます。また、一緒にできたことはその子ができたこととして捉え、ほめる回数を増やしていきます。

 このような支援の結果、運動エフェクトに全種目参加するようになっただけでなく、車から降りることの抵抗が減ったり、帰りの準備を自分ですることができるようになったり、帰りの会に皆と一緒に座ったりすることができるようになったりする等、運動以外の場面でも行動が改善されました。まだいつもできるわけではありませんが、皆に合わせて行動する、指示に応じることが少しずつ身に付いてきています。今後も支援を継続し、適応行動をさらに増やすとともに、活動を楽しみながら集団行動を少しずつ身に付けられるよう支援していきます。

Juri F.

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