友達と仲良くするためのルールを知り、守ることができるールール支配行動を用いた支援ー

 本支援計画書では、はじめに、良い点、次に、改善しなければならない行動、続いて、ルール支配行動の定義、特徴及びルールの習得方法について述べていきます。

 まず、良い点についてお伝えします。明るく活発な性格で、様々な活動に積極的に取り組んでくれています。運動では、記録会でV字ドリブル100回や短縄の前跳び100回を合格することができました。また、反復横跳びでは、闇雲に動くのではなく、線を意識して動けるようになり、記録が28回から40回に伸びました。集団遊びでは、それぞれの遊びのルールを理解し、楽しむことができています。「鬼をやりたい」、「整列係をやりたい」、「あいさつ係をやりたい」等、本児童の元気の良さや積極性が良い面として現れています。

 次に、改善しなければならない行動について3点お伝えします。1点目は、思うようにいかないと友達を叩いたり蹴ったりし、力で解決しようとする点です。自分より年上の子に対しては行わず、自分より弱い立場の子に対して行っています。また、注意を受けると言い訳をし、素直に受け止めることができません。2点目は、ちょっとしたことで怒る点です。声を荒らげることで相手を怖がらせ、自分の思いを通そうとします。具体的には、ブロックで作った物がたまたま壊れてしまった時に近くにいた年下の子のせいにして怒り出します。また、ボール当てでは、自分専用のボールはありませんが、別の子が本児童の使っていたボールを使うと怒り出します。ジャンケンでどちらが使うか決めるよう促しても「自分が使っていた」と言い張り、聞く耳を持ちません。3点目は、嘘をつく点です。本児童には嘘をついている自覚はないようですが、友達からは嘘をついていると思われています。特に、自分のことを良く見せようとして嘘をつくことがよくあります。頻繁に嘘をついているので、友達に「また嘘じゃないの?」と言われてしまうほどになっています。これらの点を改善するため、応用行動分析学のルール支配行動を用いた支援をしていきます。

 続いて、ルール支配行動の定義、特徴及びルールの習得方法についてお伝えします。そもそもルール支配行動とは、実際に結果が出たり直接体験したりしていなくても行動随伴性を記述した言語によって制御される行動のことです。つまり、「歯磨きしないと虫歯になるよ」や「お手伝いしてくれたらお菓子を買ってあげるよ」等、「〇〇したら××という結果が生じる」という随伴性を伴う言葉によって未経験の状態でも制御される行動のことです。

 次に、ルール支配行動の数ある特徴の中から、本児童の支援に有効な5点をお伝えします。1点目は、随伴性形成行動に比べて行動を早く変容させることができる点です。随伴性形成行動は直接経験して行動を学習することに対し、ルール支配行動は直接経験していなくてもアドバイス等の言語刺激のみで行動を生起させることができます。2点目は、他者からの承認で強化される点です。例えば、友達と仲良くできた日に「よくルールを守れましたね、がんばりましたね」と承認する声掛けを行うと強化され、また同じ行動をとるようになります。3点目は、強化期間を限定すると価値が高まる点です。1日良い子で過ごせたらシールを貼り、シールがたまったら景品と交換できる現行のトークンのように、長い期間でフィードバックするよりも、1日の終わりに褒められたり、行動を抑えられる度に褒められたりする短い期間で行うフィードバックの方が好子の価値が高くなり、またその行動をとるようになります。4点目は、言語刺激との等価関係を形成すると好子の価値を高める点です。例えば「オーガニック」という言葉が「健康的」という言葉と結びつくように、ある言葉と別の言葉の等価関係が成立し、それが好子として機能すれば、確立操作としてその言葉の価値を高めることができます。本児童の成長に伴い効果的な言葉は変化する為、その都度、心に響く言葉を模索し提供していきます。5点目は、機能変容作用がある点です。これは、ルールに記述された刺激の機能がルールによって変容する作用のことです。例えば、「料理を取り出してください」という指示ならその言葉自体が弁別刺激ですが、「(電子レンジが)ピーッと鳴ったら料理を取り出してください」という指示になると「ピーッ」という音が料理を取り出す行動の弁別刺激に機能変容します。「ブロックを投げないと約束できるなら○○ができるよ」等、制御対象となる行動(ここではブロックを投げたり独り占めしたりすること)が自発される前に、ブロックで遊ぶ条件をポジティブな声掛けによるルールとして伝えることによって、その言葉が良い行動を強化する弁別刺激となります。つまり、事前に望ましい行動と本児童にとってプラスの意味合いをもつ行動とをセットにして伝えることで良い行動の促進効果が得られます。

 続いて、ルール支配行動を習得させる方法についてお伝えします。ルール支配行動は、随伴性の記述による行動を様々な場面で強化すること(般化オペラント)で習得されます。ルールは特定の言語刺激に対する特定の行動を引き起こすものではなく、何らかの共通特性をもった刺激が何らかの共通特性をもった行動を引き起こすことを意味しています。動作模倣を一つずつ多数教えていくと直接的学習歴のない行動が自発されることと同様、ルールも一つずつ多数教えていくことで、教えたことのないルールも守れるようになります。つまり、望ましい行動を本児童に一つずつ伝えていくことで、それらが本児童の中で関係づけられ、教えられていない望ましい行動が自発するようになっていきます。

 以上、良い点、改善しなければならない行動、ルール支配行動の定義、特徴及びルールの習得方法について述べました。本児童のとる言動に悪気があるわけではありませんが、友達とのトラブルが絶えず生じています。まだどのように振る舞えば友達と仲良くできるかを知らない為、一つずつルールとして伝え、より上手に友達と関わることができるよう支援していきます。
Juri F.