構成的グループエンカウンターを活用し、友達との関係性の改善を図る

 明るく活発な性格で、友達と積極的に関わり、楽しそうに過ごしています。自由遊びの時間は、いつも挟みドッジボールをしています。ボールを投げたりキャッチしたりすることが得意で、友達と一緒に盛り上がっています。また、保育園の子が「ドッジボールやりたい」と言うと、遊びに付き合ってくれる優しさをもっています。その子のレベルに合わせて緩やかにボールを投げて楽しませてくれました。今後も友達との良い関係を維持することができるよう支援していきます。

 運動エフェクトでは、運動全般が得意で自信をもっており、様々な種目に積極的に取り組み、がんばっています。ラダートレーニングでは、すばやく正確に行うことができ、上手です。キャッチボールでは、ねらった所に投げることが上手で、「ナイスボール」と褒められることがよくあります。最近はサッカーのパスゲームが上手になり、パスが続いたり、勝てるようになったりしてきました。また、集団遊びが好きで、ルールをきちんと守って楽しむことができています。今後も、得意な部分をさらに伸ばし、自己肯定感を高めていきます。

 学習の面では、切り替えが早くがんばっています。以前に比べ集中力の持続時間が伸び、その日の課題を終えられることが増えました。算数のワークでは、分からない所があると自分から質問し、効率よく進めることができています。社会では、すべての都道府県の名前と地図上の位置を覚え、漢字で書くことができるようになりました。英語では、CDに続いて発音練習をしたり、ノートに英文を書いて練習したり、並べ替えのテストをしたりしています。ノートに英文を写すことがとてもスムーズにできるようになり、スラスラと進めることができています。また、文法も少しずつ分かってきて、肯定文から疑問文や否定文に直す問題が一人でできるようになりました。今後も丁寧に学習支援を行い、できることを増やしていきます。

 気になる点は、友達に対し意地悪な発言をしたり、友達をバカにして面白がったりする点です。具体的には、学習時に公文の問題の解き方が分からずイライラしている子に対し「そんなことも分からんの。僕はとっくに終わった」と相手の気持ちを逆撫ですることがあります。また、運動エフェクトでビーチフラッグスやサッカーのパスゲーム等をすると「○○(友達の名前)負けろ」と言って相手に嫌な思いをさせることもあります。他には、ドッジボールで特定の子を集中狙いして嫌な思いをさせ、泣かせてしまうこともあります。本児が意地悪をする相手は、ほぼ決まっていて、感情的になりやすく意地悪をすると反応が返ってくる子が多く、それが面白いことが維持要因と考えられます。また、意識しているわけではありませんが、友達をバカにすることによって自分の立ち位置を上げようとしていることから、自己肯定感の低さも関係していると考えられます。したがって、これらの気になる点を改善するため、構成的グループエンカウンターの手法を用いて他者理解を深め、友達に対する嫌がらせを減らしていきます。構成的グループエンカウンター(Structured Groupe Encounter 以下SGE)は、各種の課題(エクササイズ)を遂行しながら、心とこころのふれあいを深め、自己の成長をはかろうとするグループ体験であると定義されます(國分康孝,2018)。

 SGEのキーコンセプトの一つは自己開示です。自己開示をするために必要な前提は、「あるがままの自分を受容する」ことです。自己受容の宣言が自己開示であり、自己開示によって自己受容を確認しているといえます。これを繰り返すことにより、結果的に生きる力の源である自己肯定感が育っていきます。(國分,2018)SGEは、“エクササイズ”と“シェアリング”で構成されます。エクササイズはねらいを達成するために用意された課題であり、ねらいには、①自己理解②他者理解③自己受容④自己主張⑤信頼体験⑥感受性の高まりなどがあります。シェアリングは、エクササイズを振り返って、そこでの気づきや感情を本音で出し合い、分かち合うことです。SGEではホンネとホンネの交流が求められますが、ただ自由にホンネを言い合っていたのでは、ねらいが達成できないばかりか、抵抗や自己嫌悪といった心的外傷を起こしかねません。そこでSGEでは、意図的エクササイズを選定したり、時間やルールを設けたりすることや、リーダーの介入によってそれらを防ぐような配慮がなされています。(のりそら,2021)SGEを行う際の技法上の留意点は、以下の3点です。1点目は、ふざけ防止です。たとえ悪気はなくても人を傷つける発言は禁止する、敬意を持って聞く、というルールを子どもの年齢相応に説明します。2点目は、テーマ選択の際には、家庭生活に関するテーマは子どものストレスにならないものを選びます。また、どんな子どもでも参加できるエクササイズにするか、パスしてもよいことにするなどストレス予防に留意します。3点目は、事後のサポートです。事後必ず、振り返り用紙に記入させるかシェアリングを行い、不全感・劣等感・自己弱小感が残っていないかを確認します。SGEがマイナス効果だったのではと気になるときは、すぐその子どもに声かけをします(國分,2018)。

 ここからは、本児と一緒に実際に行うエクササイズの具体的内容と効果を6つ紹介します。これらを行うことにより、友達との一体感を感じたり、友達のことをさらに深く知ったり、友達の良さを感じたりすることができます。1つ目のエクササイズは「バースデーリング」です。一言も口をきかずに身振り手振りで誕生日の順に並び、全員で一つの輪をつくるというものです。友達との一体感や集団への所属感を体験することができます。2つ目のエクササイズは「似た者同士」です。好きな季節や動物などで、グループを作りそれがなぜ好きなのかを話し合い発表します。似た考えの友だちに気付いたり、自分と違う考えがいろいろとあることに気付いたりすることができます。お互いを知るきっかけを作ることができるゲームです。3つ目のエクササイズは「新聞タワー」です。グループごとに、人数分の新聞紙で、のりやセロテープを使わずにできるだけ高いタワーをつくるにはどうしたらよいかを話し合って作ります。自分の考えを積極的に言ったり、人の考えを受け入れたりしながら、協力する楽しさを体験することができます。4つ目のエクササイズは「じゃんけんインタビュー」です。時間内にできるだけたくさんの友だちとジャンケンし、勝ったら「好きな食べ物」「好きな教科」「好きなスポーツ」「運動会で楽しみな種目」「夏休みの一番の思い出」「将来なりたい仕事」の中から一つだけ質問できます。答えられない時はパスもできます。普段、あまり話をしない友だちとも話す体験をし、リレーションを高めることができます。5つ目のエクササイズは「いいところ見つけ」です。円形になって座り、一人だけ真ん中に座ります。一人ずつ真ん中の子の肩に手を置いて「運動会で一生懸命走ってたのが格好よかったよ」「泣いていた時に慰めてくれてありがとう」などと、その子のよかったところを言います。一つ言ったら一つずつずれて、次の子が真ん中の子のよかったところを言います。グルグルと回っていって、全員が言い終わるまで続けます。ここぞとばかりに良いことを言う子が続出して、感動的になります。自分の良さや友達の良さに気付き、自己理解や他者理解を深めることができます。6つ目のエクササイズは「グループビンゴゲーム」です。これは、先生の質問に対し、自分が考えたことをグループで一緒に言うゲームです。例えば、「花ビンゴ。花と言ったら」と先生が問いかけたら、個々に思いついた花の名前を同時に言います。全員が同じ名前だったら「ビンゴ賞」となります。友達が何と答えるかを想像しながら自分の考えを言ったり、友達のことを知ったりすることで、友達とのリレーションを高めることができます。(のりそら,2021)エクササイズの後にはシェアリングを実施し、自分の気持ちの変化に気づいたり、友達の新しい一面を知ることで生じた変化に気づいたりすることができるようにします。これらのエクササイズを通して友達との関係性を深めるとともに、友達のことを知るきっかけとし、特定の友達に対する嫌がらせを減らしていきます。

 本児は、様々な活動に積極的に取り組み、楽しそうに過ごしています。今後も良い点をさらに伸ばすとともに、構成的グループエンカウンターのエクササイズを通して友達の理解を深めることで特定の友達に対する嫌がらせを減らすことができるよう支援していきます。

引用文献

國分康孝(2018)構成的グループエンカウンターの理論と方法―半世紀にわたる探求の成果と継承― 厚徳社

のりそら(2021)5分でわかる最高の学級をつくる魔法のテクニック10選:構成的グループエンカウンターの活用 NEXTAGE SCHOOL文庫

Juri F.