学習に向かう姿勢や学習の仕方を身に付けるー学習内容を深く理解するために認知心理学の観点から考える支援ー
明るく穏やかな性格で、友達と積極的に関わりながら楽しそうに過ごしています。自由遊びの時間は、クマの人形を使ってアニメやゲームのストーリーを再現していることがよくあります。とても細かく覚えており、友達とストーリーを共有して盛り上がっていることが多く、仲良く過ごすことができています。特に仲の良い子だけでなく、色々な子に話しかけるようになり、コミュニケーション力が向上しました。今後も友達との良い関係を維持することができるよう、支援していきます。
クッキングでは、パフェとチョコバナナクレープを作りました。クッキングを楽しみにしてくれており、いつも積極的に参加してくれています。材料の買い物では、グループの中で1番に品物を見つけ、「○○君、ここにあるよ」と嬉しそうに報告していました。また、どの缶詰にするか選ぶ時も「これだったらパイナップルとミカンの両方が入っているから、皆が喜ぶと思う」と皆のことを考えながら選ぶことができ、優しさを感じました。クッキング中は、作り方の説明の紙を見ながら見通しをもち、「次の○○をやりたい」と、材料を量ったり、混ぜたり、タッパーに流し入れたりする等、様々な工程に参加してくれました。また、他の子が混ぜている時にも「僕が押さえててあげる」とボウルをしっかりと支えてくれたり、生クリーム作りで保冷剤を当てて冷やしてくれたりする等、他にできることはないか考えて行動に移すことができました。本児はクッキングに興味があり、いつも楽しそうに取り組んでいます。今後も、クッキングの機会を提供し、楽しみが増えるようにしていきます。
運動エフェクトでは、どの種目も真面目に取り組んでくれています。記録会では、いつも過去最高記録を意識し、記録更新を目指してがんばっています。幅跳びでは、跳び方が上手になり、140cmほどの記録を安定して出すことができるようになりました。2個同時ドリブルでは、ボールの操作が上手になり、半年前に比べて記録を大きく伸ばし、69回もできるようになりました。反復横跳びでは、繰り返し取り組んできたことによって余分な動きが減り、動きが洗練されて上手になりました。サッカーのパスゲームでは、まっすぐ蹴り返すことが上手で、友達とパスが続くと嬉しそうにしています。連続で勝つことができることもあり、楽しんでいます。ドッジボールでは、ボールをキャッチすることが上手になり、がんばっています。今後も様々な運動を楽しんでもらい、運動技能の向上を図っていきます。
学習の時間は、準備を早くすることができ、がんばっています。毎回その日の課題をきちんと終えることができており、真面目に取り組んでいます。算数では、分からない所があると自分から質問し、効率よく進めることができています。解き方の理解が早く、すぐに一人で解くことができるようになります。今後も学習のサポートを継続し、学力の向上を図っていきます。
気になる点は、誤った学習の仕方をしている点です。具体的には、漢字の宿題をする際に友達とおしゃべりしながら書いていたり、社会のワークに取り組む際に「1番は○○」「2番は□□」等、問題番号で答えを覚えていたりします。このような学習の仕方では、時間を費やしても身に付くはずの力が身に付かず、努力が成績に結びつきません。したがって、不適切な学習態度については、その都度声を掛けて減らしていきます。また、学習の仕方については、現時点、口頭でランダムに出題し、しっかりと覚えられているかを確認するようにしています。こうすることによって学習したつもりであったことが、実際には身に付いていないことに気付くきっかけとなります。
本児は、興味のあることを覚えることは得意ですが、社会の用語や漢字を覚えることを苦手としています。この点を改善するためには、生涯にわたって学び続けることの大切さを伝え、なぜ学ぶのか、学ぶことの必要性を感じてもらったり、また、どのように学ぶのか、具体的な学習方法を身に付けてもらったりし、本児自身の学習に対する姿勢を変えていくことが大切です。行動主義心理学では、刺激と反応の連合形成が学習とみなされ、どのように理解されているかは問題になりません。数学の公式のように、丸暗記的な学習では、その知識が使われなければ急速に失われてしまいます。本児の社会の学習は、この丸暗記の状態に近く、その場では覚えていても、時間が経つと忘れてしまいます。また、何の脈絡もなく、単独で用語を覚えようとしても、困難であることは容易に想像ができます。一方、認知心理学では、理解や推論、思考といった認知過程を重視しています。単なる丸暗記ではなく、別の知識と結びつけて理解を伴って覚えた人は忘れることがなく、仮に忘れてしまったとしても、理解したことを基に自分で必要な知識を思い出すことができます。このように、学習すべき内容を深く理解することが重要です。そのためには、行動主義心理学のように観察可能な刺激と反応のみに着目するだけでは不十分で、反応が生じる内的過程に注目する必要があります。したがって、本児の学習をサポートする際にも、単なる知識を伝えるだけでなく、具体的なイメージを持つことができるような解説を加えたり、既有知識と結び付けたりする等、背景や経緯、他の知識も伝えるようにし、様々な観点から知識同士のつながりを深められるようにしていきます。そして、「なるほど」「そういうことだったんだ」と腑に落ちることが多くなるようにしていきます。また、学習は、新たな知識が既有の知識にうまく組み込まれていくと深化をしていきます。熟達者と初心者の違いは、豊富な知識量やその知識の体制化のされ方、つまり、知識が頭の中にうまく整理されて蓄えられているか否かであるといわれています。したがって、学習者が知識をうまく体制化できるように支援することが重要です。そのためには、基本的な概念を理解させるために、十分に時間をかけることが必要なだけでなく、教える側が内容について十分理解し、よく体制化された知識をもっていることが大切です。以上、お伝えしたように、なぜ学ぶのかといった学習の根本の理解を促したり、知識同士のつながりを深めて知識をうまく整理し、引き出しやすくしたりする等、学習の仕方を改善し、成績向上につなげていきます。
本児は、コミュニケーション力が伸び、毎日楽しそうに過ごしています。今後も学習のサポートを継続し、学ぶことの意味の理解を促し、学習の成果がしっかりと結果につながるよう支援していきます。
引用書籍
南山大学人文学部心理人間学科(監)(2010)「ファシリテーター・トレーニング 自己実現を促す教育ファシリテーションへのアプローチ」株式会社ナカニシヤ出版
Juri F.