友達と遊んだり運動したりし、生き生きと生活することができるー不安と記憶の関係について脳のメカニズムから考える支援ー

 優しく穏やかな性格で、運動も学習も一生懸命取り組んでいます。運動の面では、運動エフェクトや戸外活動で楽しく身体を動かしています。特にドリブルが得意で、短期間のうちにドリブル100回・V字ドリブル100回を合格し、現在は2個同時ドリブルに挑戦中です。とても早いペースで2つの課題を合格したので、友達が「もう2個同時なの?」と驚いていました。集団遊びでは、ルールをしっかりと守ることができます。川渡りゲームや2on1では、慎重になりすぎず、思い切って走り出すことができるようになり、より楽しめるようになりました。また、台風の目で小さい子とペアになった時には、コーンを回る回数を間違えないよう声を掛けながらリードしてくれました。戸外活動では、鬼ごっこやサッカー、ハンドベースボールをして遊んでいます。鬼ごっこでは、鬼の様子をうかがいながら早めに逃げ始め、あまりタッチされません。鬼に追いかけられている時にも途中で諦めることなく、がんばって走り続けています。ハンドベースボールでは、バッター・ピッチャー・キャッチャー・守備の役割を交代しながら、友達と仲良く楽しむことができました。今後も運動を通して身体を動かすことや友達との交流を楽しんでもらいます。

 学習の面では、切り替えが早く、集中して取り組むことができています。公文では、2学年先学習到達を目標にコツコツとがんばっています。少し内容が難しくなってきたので、丁寧に繰り返し解き方を伝え、安心して取り組むことができるよう配慮します。レプトンでは、繰り返し練習するうちに、会話文を一人で読むことができるようになります。また、書く量が多めの日もありますが、いつも丁寧に書くことができ、文を書く時のルールも意識することができています。まだ次に何をするのか、どこまで進めるのかが分からないと止まってしまうことがあるので、不安なく取り組むことができるよう、声掛けを増やしていきます。

 友人関係の面では、友達との関わりがさらに増えています。特に土曜日は自由遊びの時間が長いので、自分から友達の輪に入ることがよくあります。恐竜で遊んでいる子の所に「宅急便です」とご飯を配達してくれたり、ブロックで作ったロボットでぬいぐるみを救出したり、バスごっこで面白い運転手役を考えたりする等、思い浮かんだストーリー展開を友達と共有し、会話が弾んでいます。友達のしている遊びに合わせたり、自分の役を考えて加わったりすることが上手で、友達と仲良く過ごしています。本人の優しさや寛容さ、発想の面白さから、本人と遊ぶことが好きな子がたくさんおり、同年代の子、年上の子、年下の子、大人しい子、活発な子等、誰からも好かれています。今後も友達との関わりを深めてもらい、楽しく過ごしてもらいます。

 気になる点は、苦手なことに向き合うことが難しい点です。「がんばりたい」気持ちと「思うようにならない」気持ちの葛藤を上手く処理できない困り感を持っています。不安と記憶の関係についてのメカニズムを参考にして、本人がより生き生きと生活できるよう支援していきます。以下、不安と記憶の関係についてお伝えします。

 不安を感じる脳部位は扁桃体です。扁桃体は左右に2つ、何となく好き又は嫌いなどの気持ちを作り出しています。扁桃体で不安を感じるとHPA系(視床下部、下垂体、副腎)が反応を起こします。具体的には、視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン)、下垂体からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、そして、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が分泌され、逃避等のストレス反応が起きます。上記HPA系の活性化が起こると、血液に副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が分泌され海馬のニューロン(神経細胞)に働きかけ、海馬がHPA系の反応を抑えます。但し、コルチゾールが出過ぎると海馬の働きが抑えられてしまいますからストレスをコントロールすることが必要です(扁桃体の機能亢進と海馬の機能低下)。

 一方、記憶の固定化は海馬のニューロン新生(神経幹細胞)が関係しています。記憶は、最初に海馬(短期記憶)で記憶して、重要な情報は大脳皮質(長期記憶)に転送されます。最終的には、海馬を必要とせず大脳皮質から記憶を想起します。神経幹細胞は海馬歯状回で生まれます。海馬にコルチゾールが入りストレスを受けると神経幹細胞の新生が抑制されます。海馬ニューロンの新生が抑制されると不安な状態が持続し、記憶の大脳皮質への転送、固定化が遅れます。嫌悪記憶の消去には神経幹細胞が新生される必要があります。神経幹細胞は遊んだり運動したりすることで新生されることが分かっています。

 私たちは脳のメカニズムを意識することはありませんが、メカニズムを知ることで様々なことに対応できるようになります。友達と楽しく遊んだり運動したりすると海馬で神経幹細胞が新生されストレスを抑えることができます。また、嫌悪記憶が大脳皮質に転送され嫌な気持ちが減り、今よりも更に生き生きと生活できるようになります。

Juri, F.