一定時間内に帰りの準備ができるようになるー前頭前野下辺縁皮質でコントロールする習慣的行為ー

 明るく優しい性格で誰とでも仲良く過ごすことができています。自由遊びの時間は、ブロックやカプラで大作を作ったり、友達とキャッチボールやドッジビーをしたり、友達と協力してとても長いドミノ倒しをしたりする等、友達と関わりながら楽しそうに過ごしています。穏やかで友達に慕われており、「一緒に遊ぼう」と誘われたり、「入れて」と頼まれたりすることがよくあります。いつも快く「いいよ」と答えてくれ、優しくしてくれます。

 コミュニケーションの面では、Show & Tellに積極的に取り組んでくれています。堂々と発表することができ上手です。原稿を予め用意するようになってから発表内容の幅が広がり、物の名前や時、場所の情報だけでなく、工夫した所や一番好きな所とその理由等を話してくれるようになりました。また、友達からの質問に答えることにも慣れてきて、「分かりません」と答えることが減り、正確には分からなくても「だいたい〇○です」等と、その場での対応が上手になりました。「項目特定処理」クイズでは、話をしっかりと聞くようになり、取り組む姿勢が改善しました。これに伴い、クイズに正解できることも出てきました(島田,2008)。

 学習の面では、公文・レプトンをがんばっています。公文では、目標を設定してから、決めた枚数を安定して終えられるようになり、がんばっています。分からない所があった時に気落ちしてしまうのではなく、自分から質問しに行くことができるようになりました。学習内容が少しずつ難しくなってきていますが、コツコツと進めることができています。レプトンでは、終わる時間を気にすることが減り、集中して取り組めるようになりました。最近は聞き取りクイズに正解できるようになり、自信をもっています。また、新しいテキストの進め方が定着し、自分で次の所を進めていくことができるようになりました。

 運動の面では、身体を動かすことが大好きで、どの種目も積極的に取り組んでくれています。記録会では、この半年間で幅跳びが153cmから189cmに、線に沿って動きながら行う2個同時ドリブルが8回から80回に大きく伸びました。また、新記録を出した友達の名前と回数を正確に覚え、積極的に手を挙げて答えてくれます。集団遊びでは、ルールをしっかりと守って行うことができます。チーム対抗戦では、小さい子に対するサポートもしてくれ、優しく接してくれます。

 気になる点は、準備に時間がかかってしまう点です。帰りの準備をしたり出掛ける準備をする際、準備をあまりしたくないという気持ちから自分のしたいことを優先してしまったり、物の整理が苦手で時間がかかってしまったり、期待に応えようとする気持ちに波があったりする等の様々な要因が考えられ、声掛けを続けていますがなかなか改善しません。時々意識的に行動し「今日は1番になったよ」と嬉しそうに報告してくれたことが何度もありますが、その時の気分に左右され長続きしていません。そこで、本支援計画書では、何をすればよいか分かっているのにできない理由及びできるようになるための支援方法についてお伝えします。新しい行動の獲得の段階では、前頭前皮質で行為の決定をし、中脳におけるドーパミン分泌の程度によって、決定した行為が上手くいったか失敗したかを判断しています。習慣は、行為を繰り返すうちに線条体や運動野におけるその行為を行う際のネットワークがチャンク化されることで形成されます。具体的には、学校から帰ってくると直ぐにゲームをしてしまう、PCを開けると直ぐにニュースを見てしまう等が挙げられます。一旦チャンク化されると、その状態から抜け出すのが難しくなります。習慣は前頭前野下辺縁皮質で刷り込みが行われていると同時に、毎回その習慣的行為をしてよいかをニューロンのオンオフでコントロールしています。この習慣から抜け出し準備が早くできるようになるには、行為をコントロールしている所に働きかけるしかありません。早く準備する方がドーパミンの分泌量が多ければ、早く準備する行為が選択され、その一連の行為がチャンク化されニューロンがオンの状態になります。習慣から抜け出すには、好ましい行動をした時にドーパミンが出るようにしなければなりません。ご褒美を用意すればドーパミンは出ますが、ご褒美がないとドーパミンが出ないというデメリットが生じます。一方、笑顔は物を用意する必要がなく、何度もドーパミンを出せるというメリットがあり推奨されています。先日も、本児童の帰り支度を横で見ていて、「ランドセルを開けた、凄い、やる気だ」、「もう仕舞った、今日は早い」等、1度の帰り支度で20回以上褒めて笑顔を送り、ドーパミンとテキパキとした帰り支度の行動を引き出すことができました。更に、適切な行動が生じ易くなるよう、事前に行動の重要性を言語化しておきます。そして、最終的には、人から褒められる、ご褒美を貰えることで行動する付加的強化随伴性から、自分自身がきちんとしたいと考え行動する行動内在的強化随伴性にシフトしていきます。それを促すために、準備行動が必要なときのリーダーになってもらいます。例えば、出掛ける際、全員にトイレに行くよう声を掛けたり、水筒を手にして所定の位置に座ってもらったり、教室から車に移動する際の声掛けをしてもらったりします。リーダー的役割を担ってもらうことで、本児童の内面に「準備をしなければならない」ではなく、「準備はテキパキと行うものだ」という気持ちを芽生えさせていきます。

 本児童は最近、自分の気持ちと上手く折り合いをつけて適切な行動を選択し、気の進まないことにも取り組むことができるようになってきています。帰りの準備も根気よく声を掛け、適切な行動を笑顔で強化し、一定時間内にできるよう支援していきます。

Juri, F.