生活面の自立や友達との関わりについて、認知面に働きかけて適応的な考え方を身に付けるー論理情動行動療法を用いて物事の捉え方を変容する支援ー

 明るく人懐っこい性格で、友達や指導員と積極的に関わり、楽しそうに過ごしています。自由遊びの時間は、お絵描きや工作をしたり、挟みドッジボールをしたりしています。自分のしたいことをはっきりと伝えることができ、友達と仲良く遊んでいます。

 コミュニケーションの面では、お話することが好きで、学校のことや家のこと等、様々なことを話してくれます。以前に比べ、話の内容が詳しくなり、伝えることが上手になりました。また、自分の話したいことを話すだけでなく、相手からの質問に対して答えることができるようになってきて、双方向のやりとりが上手になりました。今後も、良い面をさらに伸ばし、コミュニケーション力の向上を図っていきます。

 クッキングでは、いつも前々から楽しみにしてくれています。生地を混ぜること、たこ焼き器で生地をクルクル回すこと、ハンバーグを焼くこと、トッピングすること等、初めて経験することが多くあり、良い刺激になっています。「できないからやってください」と助けを求めることが多いですが、「一緒にやってみよう」と補助しながら経験してもらうことで、「できた」の経験を多く積み重ねることができています。このような安心してチャレンジできる環境を整え、達成感を味わえるような活動にすることで、またやってみたいという意欲を引き出すことができています。今後もクッキングの機会を提供し、様々なことにチャレンジしてもらい、成功体験を積み重ねてもらいます。

 運動エフェクトでは、どの種目も真面目に取り組み、がんばっています。ルール理解力が伸び、ほとんどの種目を補助無しで行うことができています。長縄では、回っている縄のタイミングに合わせて入ることが上手になり、跳びながらしりとりをすることが上手になりました。鬼ごっこ系の種目では、逃げるタイミングを自分で考えて適切に判断することができるようになり、鬼に捕まることが減りました。ドッジボールでは、ボールを投げることが少しずつ上手になってきており、より楽しめるようになりました。また、緩やかなボールをキャッチできるようになり、嬉しそうにしています。今後も友達と一緒に様々な種目に取り組んでもらい、楽しく身体を動かしてもらいます。

 学習の面では、切り替えが早く、集中して取り組むことができています。分からない所は自分から質問することができ、効率よく進めることができています。また、車の中でよく九九のクイズをしていますが、ランダムに出題してもすぐに答えることができています。しっかりと覚えることができており、本児も自信をもっています。公文では、かけ算の筆算の練習をしています。繰り返し練習して解き方を覚え、がんばっています。今後も丁寧に学習支援を行い、できることを少しずつ増やしていきます。

 気になる点の1つ目は、生活面において依存的な面がある点です。普段から行っていることは一人でできますが、飲み物をこぼす等のイレギュラーなことがあると、ここまでの経験を生かせず、助けを求めることが多くあります。助けを求めることは必要なスキルですが、いずれはここまでの経験から自分で対応できるようになることも大切です。2つ目は、友達とのケンカが多い点です。相手がわざとしたことではなくても「何するんだ」と怒ったり、相手から指摘を受けると、全く関係のない数日前の話を持ち出して「○○君だって…」と怒ったり、相手が謝っているのに「○○君は嫌い」と言い続けたり、お互いに謝ってケンカが終わったにもかかわらず、まだ根に持っていて「さっきの(言い方)は嫌だったから、今度からは言うなよ。わかった?」としつこく言ったりします。このような点を改善するため、認知行動療法の一つである論理情動行動療法を用いて物事の捉え方の変容を促していきます。論理情動行動療法とはエリスの考案したもので、個人の行動は出来事や経験に対する認知的評価によって起こされると考え、認知的評価を決する個人の認知的枠組み(シェマ)を変容させることが、行動変容をもたらすとして、認知変容を目標とする療法です。論理情動行動療法では、同じ状況を経験したときの個人の行動の違いは、信念の違いによるとされるため、不適応行動の変容を目指す場合、行動そのものへのアプローチではなく、信念を変えさせることが必要となります。不合理な信念の例のうち、「自分で考えるよりまず人に相談すべきだ」「自分でやるより人にやってもらう方が楽だ」「批判されたり文句を言われたりすると腹が立つのは当たり前だ」という3つの信念が本児に当てはまると考え、これらの3つの信念の変容を促していきます。それぞれの信念に対して、そのように考えて得すること及び損することを一緒に考えます。その後、得することはそのまま維持し、損することができるだけ少なくなる合理的な信念を考えます。具体的には、「自分で考えるより人に相談すべきだ」「自分でやるより人にやってもらう方が楽だ」という信念に対して、「相談した方が良い考えがもらえることもある」「自分は何もしなくていいから楽である」等の得する面がある一方、「自分で考える力が身につかない」「人に頼ってばかりで自分で考えて行動することができなくなる」「自分では何もできなくなってしまう」等の損する面もあることを一緒に考えます。そして、合理的な信念として「相談した方が良い時と自分で考えた方が良い時を適切に判断できるようになろう」「まずは自分でやってみて、困った時は相談しよう」「自分でできることは自分でしよう」「誰かにやってもらうと楽だが、自らも積極的に取り組むようにしよう」等と例示し、対話を通して認知の変容を促していきます。もう一つの例として、「批判されたり文句を言われたりすると腹が立つのは当たり前だ」という信念に対しては、「感情を抑え込まないので嫌な思いをしなくても済む」「自分の間違いを認めなくて済む」等の得する面がある一方、「周りから嫌われてしまう」「適切な批判を素直に受け止められない」「自分に非があっても気付けない」等の損する面もあります。合理的な信念としては「より良い自分になるための糧にしよう」「今まで気付かなかった自分に気付くチャンスと捉えよう」「自分にも非がなかったか考えてみよう」「一旦受け止めてから必要があれば反論しよう」と例示し、対話を通して認知の変容を促していきます。その際、合理的な信念は、今後の行動の指針として、分かりやすい言葉で伝えることに配慮します。認知はすぐに変わるものではありませんが、経験を通してよりよい考え方を伝えていくことで、「こういう風に考えた方がいいんだ」「こうしたら友達と仲良くできるんだ」と感じてもらい、認知変容の動機づけを高めていきます。

 本児は素直な心をもっており、様々な面で成長しています。今後も様々な経験を通して良い面を伸ばすとともに、気になる点の改善を図っていきます。

Juri F.

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