Q. 障がいの程度についての考え方は?
A. ご利用に際し、障がいの程度は関係ありません。重度から軽度までのすべての子を受け入れています。弊所は、インクルーシブ教育を実践しており、すべての子どもが支えあい、多様性に対応できる教室づくりをしています。
Q. 指導環境はどのような形?
A. 指導環境は、マンツーマン指導、少人数指導(ペア活動・小グループ活動)、集団指導等、その子に適した環境を提供しています。
Q. 事業所内の環境配慮は?
A. おもちゃはおもちゃの部屋、ランドセルは私物を置く部屋等、指導訓練室には物を置かないよう構造化しています。運動の時間は運動に、勉強の時間は勉強に等、取り組む課題に集中できるようになっています。また、バリアフリー化により、床には段差が無く、広いトイレを設置しています。更に、怪我の防止対策として、壁には柱などの出っ張りがなく、窓の高さは全て150cm以上、扉は全て引き戸でソフトクローズ機構付になっています。
Q. 利用できる年齢は?
A. 2歳~18歳までのお子さまにご利用していただけます。
Q. 療育とは?
A. 療育とは、子どもの特性を治すことではなく、どのような工夫をすれば生活し易くなるのかを考え支援することです。また、愛情のある支援者のもとで、家庭と同様の変化しない環境を保障しながら、発達段階に応じたニーズを満たしていくことです。
Q. 利用日数の決め方は?
A. 利用日数は、ご利用者の希望に合わせて設定することができます。週1回からご利用いただけます。
Q. 週1回の利用で効果はでますか?
A. 週1回の利用でも効果は出ます。まずは療育を受けていただくことが大切です。また、保護者の方が考える子どもへの対応法と、行動分析学の専門家が考える子どもへの対応法には、違いがあることもあります。弊所からのアドバイスを家庭で実践していただくと、療育の効果を更に高めることに繋がります。
Q. 体験の方法は?
A. 体験は随時受け付けています。基本、木曜日の16:00から17:00で承っています(祝日及び長期休暇時は14:00から15:00)。木曜日のご都合が悪い場合は、他の曜日でも対応いたしますのでご相談ください。「今は体験だけを希望する」という方も歓迎します。お気軽にお問合せください。
Q. 送迎対応は?
A. 送迎対応いたします。送迎エリアはお問合せください。
Q. 休業日は?
A. 日曜日が休業日です。お盆休みは8/13~8/15、年末年始の休みは12/29~1/3です。
Q. 延長支援は行っていますか?
A. 土曜日・祝日は9:00~10:00、夏休み等の長期休暇は9:00~10:00と16:00~18:00にて延長支援を行っています。
基本のサービス提供時間 | 延長支援時間 | |
学校登校日 | 放課後~18:00 | 無し |
土曜日・祝日 | 10:00~16:00 | 9:00~10:00 |
夏休み等の長期休暇 | 10:00~16:00 | 9:00~10:00 16:00~18:00 |
Q. 心理検査の費用は?
A. 無料です。心理検査は、認知・行動・運動・発達・精神等、様々な検査に対応しております。検査は、公認心理師が対応いたします。心理検査は、心理学の理論的な根拠により、測定したいものを明確に表すことができます。検査の結果は、ワーキングメモリーが低い場合に声掛けの内容を簡潔にする等、適切な支援に繋げることができます。また、その子の得意な面に気付き、それを伸ばすことができます。
Q. 子どもの心理面への配慮は?
A. 家庭と同様の安心できる環境を提供しながら、子どもたちの気持ちや希望に耳を傾け、良いところをたくさん褒めて自己肯定感を高め、健やかな成長を育んでいます。
Q. 子どもとの関わり方についての考え方は?
A. 私たちの存在が、子どもたちにとって贅沢なおもちゃだと感じてもらうことが、私たちの関わり方の目標です。そうすることで、子どもたちから「日曜日(休業日)、スポスタに遊びに来ても良い?」等の、感動的な言葉をもらうことができます。良いプログラムがあれば、子どもが成長する訳ではありません。私たちは、子どもの心を動かす人間性を備えるために日々努力を続けています。
Q. 子どもの自己決定力を育むための考え方は?
A. 私たちは、子どもたちの自己決定力を育むために、子どもたちが自らの興味や選択により行っているという感覚を持つ自律性、子どもたちが自分ならできるという感覚を持つ有能感、子どもたちの取り組んでいるプログラムが自身の役に立つものであるという感覚を持つ関係性を高めることを意識して子どもたちと関わっています。
Q. 指導員の指導スキルについての考え方は?
A. 指導員の指導スキルが向上すれば、子どもの成長力も向上します。私たちは、子どもたちが良い経験を多く得られるよう、日々、スキルの向上に努めています。
Q. 非難訓練はいつしていますか?
A. 毎月1日に実施しています。避難訓練の頻度を高め、万が一のときに正しく行動できるようにしています。また、年に2回、名古屋市港防災センターで地震・暗闇・煙体験に取り組んでいます。
Q. 教室が大切にしている考え方があれば教えてください。
A. 私たちは、質の高い療育を実施するために日々努力を重ねていますが、まず第一に「大切なお子さまに怪我を負わせないよう活動することが大切である」と考えています。この考え方は子どもたちにもよく伝えており、皆で協力して、安全に且つ楽しく活動できるようにしています。
Q. 怪我を防止するための考え方は?
A. 私たちは、まず、ハインリッヒの法則を前提に、ヒヤリハットを可能な限り減らすことによって怪我が起こらないようにしています。ハインリッヒの法則とは、労働災害における経験則のことで、大きな事故の背景には、予兆となる危険が存在していることを示すモデルです。具体的には、あるスタッフが起こした1件の大きな事故の背景には、同一人物による軽度な事故が29件発生しており、さらにその背後には、事故にはならなかったが危険な状況(ヒヤリハット)が300件あることを示しています。ハインリッヒの法則を効果的に機能させるためには、ヒヤリハットを抑制する環境を整える必要がありますが、エラーの発生を報告できないような職場においては、ヒヤリハットの抑制は難しくなります。リーズンは、事故の起こらない安全文化は、報告する文化、正義の文化、柔軟な文化、学習する文化によって支えられていることを提唱しました。具体的には、エラーを報告しやすくする文化、マニュアルを軽視した場合はそれを改めるよう促す正義の文化、一方でそのマニュアルは柔軟に改訂を繰り返すことができる文化、失敗から積極的に学ぼうとする文化、これらが根付くことによってエラーは減少させられるとしました。私たちは上記観点の上に、スタッフ間の同意により対策や目標を決め、一人ひとりがそれを実行することで危険を防止する危険予知モデル(KY Model)、事故を防ぐ取り組みに欠陥がある場合、その欠陥が重なり合ったときに事故が発生することを示したスイスチーズモデル、1スタッフのエラーを他のスタッフが発見できず、事態がより危険な状態になっていくことを示したスノーボールモデル等の観点も安全管理計画に組み入れ、怪我の起きない教室運営を行っています。
Q. 怪我の情報伝達について教えてください。
A. まず入室時に事前に伺っていない外傷を確認した場合は、その場で保護者の方にご連絡を入れます。また、必要に応じて写真を撮らせていただきます。一方、運動プログラム中に擦り傷ができた等、活動中の怪我に関しては、どんな小さな怪我でも必ず電話連絡を入れるようにしています。
Q. 特異事項のある子や緊急事態への対応は?
A. 食物アレルギーのある子、何かあった場合の緊急搬送先、食事中の窒息時の異物除去法、癲癇発作・熱性痙攣等への対応法等は、正しく対処できるよう毎月ミーティングで確認をしています。
Q. 保護者と子どものニーズの把握方法は?
A. 保護者の方のニーズは、電話や連絡帳での日々の情報交換、年2回の個別支援会議、相談員さんが開催するサービス担当者会議等を通じて把握しています。子どものニーズは、主に、会話を通じて情報を得る面接法と、行動の観察を通じて情報を得る観察法にて把握しています。その他、必要に応じて、保護者の方の了解を得た上、心理検査を通じて情報を得る検査法を用いています。
Q. 提供内容記録は何を記述してもらえますか?
A. 提供内容記録は、その子どもの良い点と、全体活動の概要を記述しています。一方、記述でのコミュニケーションではなく口頭でのコミュニケーションが必要な場合は、施設長が電話連絡をしています。
Q. 情報の伝達で気をつけていることはありますか?
A. 日頃から情報の伝達が不足しないように気を付けています。また、何か気になることがありましたら、遠慮なくご連絡をいただきたく存じます。
Q. 感染症への対応等を知ることはできますか?
A. 感染症への対応方法は、感染症マニュアルから要点を抜粋し、日々の提供内容記録に提示しています。対策方法に変化が生じた場合は、その都度、お手紙にて通知しています。手洗い、換気等を徹底し、安全に活動できるよう努めています。
Q. 相談する際の手段と相談内容について教えてください。
A. 日常的なご相談は、お電話をいただいたり、連絡帳に記述していただいたりしています。相談内容については、子どものこと以外の相談にも対応しておりますので、何か気になることがございましたら、お気軽にご相談をいただきたく存じます。ご相談は、公認心理師が対応し、秘密は厳守します。
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Q. 連絡帳に相談内容を書いても良いですか?
A. もちろんです。私自身、保護者の方が日々考えていることに触れることは、子どもへの療育活動と同じだけ重要であると考えています。相談を受けた場合は、行動分析学の手続きを主軸として返答をさせていただいています。どんな些細なことでも結構です。日々感じていることを教えていただきたく存じます。
Q. 行動分析学を簡単に言い表してください。
A. 行動分析学は、褒めて維持できる行動レパートリーを、子どもにいくつ持たせられるかを科学した学問です。
Q. 子育てへの助言はしてもらえますか?
A. 子育てに関する助言は、私自身の被養育体験や経験から得たパーソナルセオリーではなく、家庭福祉論、健康心理学、発達心理学等、子育てを科学したアカデミックセオリーを土台としています。一つの質問に助言することで、自身の専門性を高めることや、他の方への助言に生かすことに繋がります。気になることがありましたら、お気軽にご相談をいただきたく存じます。
Q. 勉強会の内容は?
A. 勉強会の内容は、単なる知識の伝達ではなく、保護者の方が聞いて良かったと思えるような内容の提供を心掛けています。子育ての一助としていただけたら幸甚です。また、この勉強会の内容は、弊所の全スタッフが研修会を通して学習しており、指導スキルの向上に努めています。
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Q. 座談会は保護者のみの集まりですか?
A. いいえ。弊所スタッフも同席いたします。座談会については、私自身、保護者の方から非常に多くのことを学ばせていただいております。また、保護者の方々に交流が生まれることも大変嬉しく思っています。お忙しい中と存じますが、一人でも多くの方に参加していただけることを願っています。
Q. 個人情報の取り扱いのルールは?
A. 利用児童及びそのご家族の個人情報の取り扱いについては、以下の必要最小限の範囲に留めています。
①サービスの提供にあたり、事業所内での情報共有、他事業所等との連携・照会、サービス担当者会議等
②緊急時における医師等への情報提供
③事故発生時等における関係機関等への情報提供
上記以外の件で個人情報を使用することはありません。
Q. 保護者が支援方法を知るメリットは?
A. 米国精神保健研究所(National Institute of Mental Health,2004)は、保護者も療育に参加し、行動変容及びスキル学習の指導方法を身につけ、家庭でも療育を続けることを奨めています(山本・澁谷,2009)。また、過去には、保護者が行動療法の手続きを独学で学び、自閉症児を通常の状態まで回復させた記録もあります。現在、早期発達支援のきっかけとなったLovaas支援の週40時間療育の実現は難しいと考えられていますが、その解決方法の一つに家庭療育があります。私たちは、家庭と力を合わせて子どもをサポートしていくために、価値の高い情報を提供できるよう知識の取得に努めています。
Q. 良い活動プログラムとは?
A. 子どもたちが良い経験を得られるプログラムを指します。心理学における学習とは、学校での教科学習だけではなく、運動スキル、日常生活動作、礼儀作法等、経験によって獲得される全ての行動を指します。私たちは、子どもたちが良い経験を多く得ることができるよう、プログラムの質の向上を図っています。
Q. 質の高い個別支援計画書を書くには?
A. 質の高い個別支援計画書の作成は、特性による困り感を改善するための介入方法を知識として備えているだけでなく、その子と一緒に遊ぶなどして、その子のことを熟知していることが大切です。私たちは、知識の取得を進めるとともに、子どもとたくさん遊び、その子のことをよく知り、個別支援計画書の質の向上を図っています。
Q. 療育活動で意識していることは?
A. 私たちが意識しているのは、科学者実践者モデルです。具体的には、先行研究で得られた知見を用いて子どもたちを支援する実践者でありながら、実践で得られた知見を使用し自らも研究を行い、療育の質の向上を図っています。
Q. 場合によって個別の部屋を用意してもらえますか?
A. クールダウン用の部屋、発熱した際の部屋等は、個別の部屋を用意しています。
Q. 自閉症の症状とこだわりが生じるメカニズムとは?
A. 自閉症の症状が生じるメカニズムは、神経系の発達においてミクログリアの働きが弱く刈り込みが行われないことに起因すると考えられています。定型発達の回路は刈り込みが行われてシンプルな回路を形成しますが、自閉症は刈り込みが促進されず回路が多く残った状態となっています。こだわりが強いのは脳の中で回路が発散しているからです。刈り込みを促進させる方法については、オキシトシンというホルモンを投与する取り組みがなされていますが、まだ分からない点が多いのが現状です。
Q. 自閉症に対する療育の可能性とは?
A. 自閉症の症状は、刈り込みが促進されず回路が多く残った状態で生じますが、この神経生物学的要因に環境要因が加わることによって症状を緩和させることができる場合があります。私自身、幼少の段階から療育を施すことにより、定型発達の子に近い状態まで成長できた子を何人か見ています。自閉症は一般的に1歳6ヶ月児健診で大人に意思を伝えない等、社会的コミュニケーションに従事するモチベーションの欠如が見られます。そして、3歳児健診で言葉の遅れ、社会性の障がい、制限された関心等が見られます。子どもの発達の特徴が一番分かるのは、小学校に入って授業を受けるようになってからと言われます。自閉症等の発達障がいにおいて、早期発見、早期支援は第1選択です。刈り込みが促進されない子でも、早い段階から療育を施せば、障がい特性に起因した行動上の問題の複雑化、学習の遅れ、二次的障がい(心理的な問題、虐め、不登校、非行等)等を防ぐことができます。
Q. 早期発達支援とは?
A. 早期発達支援とは、できるだけ早期に、指導訓練などの療育を行うことにより、障がいの軽減及び基本的な生活能力の向上を図り、自立と社会参加を促進することです (内閣府、2021)。
早期発達支援を実施することで、不適応行動の問題や自尊心の低下、不登校、心身症などの二次障がい、さらには、いじめなどを未然に防ぐことができます。
指導の開始年齢は、2,3歳頃に始めることが最適で、応用行動分析の専門家のもとで指導を受けることが重要です(Green、1996)。
早期発達支援の有効性、早期発達支援の変遷、日本の早期発達支援研究の現状と課題、応用行動分析における有効な手続き及び技法については、私の執筆した下記論文、または論文の要約版をご確認ください。
Q. 早期発達支援の可能性とは?
A. 早期発達支援のきっかけをつくったのは、1987年に発表されたLovaas支援です(Behavioral Treatment and Normal Educational and Intellectual Functioning in Young Autistic Children,1987)。Lovaasは、3〜6歳までの自閉症児に、週40時間の集中訓練を3年間実施し、対象児の47%について通常の知的及び教育的機能の改善を果たしました。
現在、Lovaas支援の週40時間の訓練は、実現が難しいとされていますが、近年、週20時間や、更に短い集中訓練でも効果があるのではないかという研究が進められています。
一方、Lovaas支援で知的及び教育的機能が改善した12人と、定型発達児8人の計20人で、過去に自閉症児だったか否かの確認をしたところ、正解率は50%でした。過去に自閉症児だったかどうかが分からなくなる。これが「Lovaas支援の成果であり、早期発達支援の可能性である」と言われています。
Q. 神経系の発達とは?
A. 神経系の発達の段階は、①ニューロン(神経細胞)の誕生、②シナプス(ニューロンとニューロンの結合部分)の過形成と刈り込み、③神経回路の再構築の3段階を経ます。以下に、段階ごとに詳しく述べます。
まず、①ニューロンの誕生では、胎児期、新生児期に神経幹細胞が分裂しニューロンが生まれます。ニューロン数は胎児期で最多となりますが1歳までに1/5に減ります。小脳は生まれた後に完成するため、人は生まれた直後に歩くことはできません。動物が生まれた直後に歩くことができるのは小脳が完成した状態で生まれてくるからです。生まれたニューロンは外側に移動し、表面に溜まって6層を形成します。神経幹細胞は胎児期に存在するものですが、海馬には大人になってからも存在します。海馬歯状回で神経幹細胞が生まれニューロンの新生が増えると、記憶の大脳皮質への移送、固定化が早く起きます。人の脳は多くの動物の脳とは異なり、outer Radial Gliaという第2の神経幹細胞が生まれます。この第2の神経幹細胞が増えると、同時に産生できるニューロンが増え、脳を分厚くすることができます。oRGが多いと皺ができ、oRGが少ないと皺ができません。過去、皺が多いと知能が高いと言われた時代がありましたが、現在、皺と知能には関係がないことが分かっています。人の脳は鼠の脳から系統発生したものですが、鼠の海馬の隣には匂いを嗅ぐニューロンをつくりだす側脳室前角があります。鼠は巣に帰るために必要な帰巣本能を空間学習するために匂いを記憶します。この空間学習は、人の場合、エピソード学習に変化したと言われています。そして、生まれたニューロンの樹状突起はセマフォリン3Aを好み、軸索はセマフォリン3Aを嫌悪し、表面にニューロンが溜まる仕組みになっています。脳の表面にニューロンが溜まった部分を灰白質、軸索部分を白質と言います。神経回路の形成は誘導システムが必要で、この点が再生医療のネックになっています。誘導システムは2つあり、1つはラミニンが成長円錐をコントロール、もう1つはネトリンとスリットが成長円錐をコントロールします。
次に、②シナプスの過形成と刈り込みについて述べます。過形成ではニューロン1個から複数のシナプスを作りますが、1、2歳で余り使わないシナプスを刈り込みます。何故シナプスが刈り込まれるかは分かっていません。刈り込みのピークは1歳で、15歳までに1/3が刈り込まれます。見たり聞いたりする神経回路のシナプスの刈り込み時期は生後3か月、言語は8ヶ月、精神機能は3歳です。シナプスの過形成時の赤ちゃんには、大人にはない能力、動物の顔の弁別能力や、1つの感覚刺激に別の知覚が引き起こされ文字や数字に色を感じる又は音に色を感じる共感覚があります。生まれた赤ちゃんは、どの地域で生まれても生後8ヶ月までは同じ泣き方をしますが、8ヶ月を超えると母国のイントネーションで泣くようになります。英語学習を始めるなら早いうちにネイティブの発音を聞かせた方が良いという理由は、母国語にない音素が刈り込まれて識別できなくなるからです。LとRを聞き分ける必要がなく大人になった人は、それらの音素を聞き分ける神経回路を持っていません。
最後に、③神経回路の再構築を述べます(幼児期~思春期,臨界期)。例えば、楽器を弾く練習をすると、「1(ニューロン)×3(シナプス)+1×3」の回路が、「1×5(練習した回路が増える)+1×1」に再構築されます。シナプスの総数は変わりませんが、バランスが変化し、練習した回路が増えます。これは英才教育の論理構造です。一方、その代償として減る回路が出てきます。このシナプスの再構築は、思春期を過ぎてからは起きない現象です。人は思春期までに覚えたことは生涯忘れません。例えば、18歳で自動車免許を取得した後ペーパードライバーでいると、数年で運転感覚を忘れてしまいますが、幼少時に身につけた自転車の乗り方やスキーの滑り方は、何年ブランクがあっても覚えています。このような神経回路の成り立ちから分かることは、全てのことを完璧にこなせる人はいないということです。何かが秀でているということは、何かができないということなのです。そして、何かができないということは、何かができる可能性があるということです。私たちは、子ども達の長所を見つけ、それを伸ばす努力を続けていきます。
Q. コツコツ続けることの重要性とは?
A. 脳の中には損害回避の選択行動に関わる尾状核という部位があります。この尾状核が発達していると、能力の低下を損失と捉え継続的に練習するモチベーションが維持されると考えられています。例えば、短距離選手と長距離選手の尾状核を比べると、長距離選手の方が発達していることが分かっています。これはトレーニングを休んだ場合、筋力よりも心肺機能の方が早く低下するため、長距離選手は日々継続してトレーニングを行う必要があるからです。また、英語の語彙学習の実験で、花川隆(2013)は次のように述べています。「プログラム終了の1年後に再度検査を行ったところ、ほとんどの参加者はTOEICの点数が学習直後より低下し、右前頭葉44野の灰白質容積と、44野と尾状核の連結強度が学習前に近い状態に戻っていました。しかし、自発的に英語学習を続けていた少数の参加者は点数が保たれていたと同時に、前頭葉44野の灰白質容積と、44野と尾状核の連結強度がプログラム参加前より増加した状態を保っていました。」
上記の内容はコツコツ継続することの重要性を説いています。弊所でも、コツコツ継続することで、鬼ごっこのルールが理解できるようになったり、二重跳びができるようになったり、じっと座っていられなかった子が学習に取り組めるようになったりしています。私たちは、コツコツと頑張る環境を提供するとともに、コツコツと頑張り続ける心を支え、「継続は力なり」を実践しています。
引用文献
花川隆(2013).BMI学習による神経可塑性変化の非侵襲多角計測 科学技術振興機構(JST)