Q. 遊びスキルを向上させたいのですが?
A. 私たちは、子どもたちが友達と仲良く過ごせるよう見守り・指導をしています。例えば、友達との遊びに関心が無かったり、一人遊びが好きだったり、役割を交替しながら遊ぶことが苦手だったりする等、遊びの世界を発展させる必要が見られた場合、まずは指導員が一緒に遊び、遊びの感覚機能を発達させます。その後、2者の遊びに友達を入れて3者の遊びに発展させます。その後は、戸外活動でのグループ活動等を経て、人と人との集団における付き合い方の雛形を手に入れてもらいます。私たちは、誰もが楽しく過ごせるよう、また、将来の人間関係作りに役立つスキルを身に付けてもらえるよう、子どもたちの遊びや友達関係を見守っています。
Q. 一斉指導の場面で適応的に行動するための支援方法は?
A. 一斉指導における様々な場面を課題分析し、個々の構成要素を一つ一つ身に付けてもらうことで、一斉指導において適応的な行動をとることができるようにしていきます(Table 1)。支援の手続きとして、まず自由遊びの時間にソーシャルスキルトレーニングを実施します。その後、実際の活動の場面では、事前の声掛けにより、その場に相応しい行動を明確に伝え、適応的な行動を覚えてもらいます。適応的な行動がとれた場合には褒めてその行動を強化していきます。最終的には、全体への指示のみでその場に相応しい行動をとることができるようにします。
Table 1
一斉指導場面における適応的な行動の課題分析の一例
戸外活動 | ① 切り替える。 ・集合の合図でそこまでにしていた活動を止め、指示に従う。 ② 適切な位置に立つ。 ・皆から離れた位置に立たない等に気を付ける。 ③ 適切に注意を向ける。 ・関係のない所を見ず、話している人を見る。 ④ しっかりと話を聞く。 ⑤ そわそわしない。 ・足で石を転がす等の遊びをしない。 ・手に触れられる物を手にして遊ばない。 |
Show and Tell | ① 適切な場所に座る。 ・皆から離れた場所に座らない。 ② 適切に注意を向ける。 ・下を向かない。 ・よそ見をしない。 ③活動の意図を理解し、しっかりと取り組む。 |
運動エフェクト | ① 切り替える。 ・整列の合図があった際、その時にしていたことを止め、指示に従う。 ② 適切に注意を向ける。 ・話している人を見る。 ・お手本を見る。 ③ しっかりと話を聞く。 ④ 不適切な行動を止める。 ・友達にちょっかいをかけない。 ・関係のない話をしない。 |
集合の合図 | ① 切り替える。 ・集合の合図でその時に使っていたおもちゃをすぐに置く。 ② 適切な位置に座る。 ・皆から離れた場所に座らない。 ・一人だけおもちゃのそばに座らない。 ③ 適切に注意を向ける。 ・関係のない所を見ず、話している人を見る。 ④ しっかりと話を聞く。 ⑤ 不適切な行動を止める。 ・友達にちょっかいをかけない。 ・おもちゃに触らない。 ・関係のない話をしない。 |
帰りの会 | ① 適切に注意を向ける。 ② しっかりと話を聞く。 ③ 自分の番が来たらすぐに発表する。 ④ 不適切な行動を止める。 ・友達にちょっかいをかけない。 ・友達に話しかけない。 ・手遊びをしない。 |
Q. 課題分析とは?
A. 課題分析とは、遂行が求められる複雑なスキルを教授できるより小さな単位に分解し、課題を効果的に完了させるために必要な行動順序を確定する手法です。応用行動分析学の課題分析において行動を小さな単位に分解する際には、目に見える単位によって分解します。この課題分析の方法に加えて、その行動要素がどのような知識や技能から成り立っているのかを分析した上で、子どもがその活動や学習課題のどの部分につまずいているのか細部で捉えた実態把握を行うことができれば、複雑に見えるスキルのどの遂行部分につまずきがあるのか、より細かい要素で捉えることができ、その情報を基によりよい支援に結びつけられます。
Q. 一斉指導場面で適応的行動を獲得するための指導の留意点は?
A. 自由遊びの時間でのソーシャルスキルトレーニングについては、好きな物を用いてトレーニングすることによりモデリングの効果が促進されるということからも、子どもの好きな物を用いてソーシャルスキルトレーニングを実施します。例えば、恐竜が好きな子には、恐竜のフィギアを使って子どもの状態を再現し、どのようにすれば良いかを考えてもらいます。実際の活動の場面での事前の声掛けについては、「立つ位置は話している人の正面」というように、より具体的なルールを定め、分かりやすく伝えます。一度に様々な観点を伝えると難しくなってしまうので優先順位をつけ、一つ一つをしっかりと意識することができるよう配慮します。
Q. 友達との遊びの発展はどのように進めますか?
例えば、友達との遊びに関心が無かったり、一人遊びが好きだったり、役割を交替しながら遊ぶことが苦手だったりする等、友達との遊びの世界を発展させる必要が見られた場合、まずは指導員が一緒に遊び、遊びの感覚機能を発達させます。その後、2者の遊びに友達を入れて3者の遊びに発展させます。その後は、戸外活動でのグループ活動等を経て、人と人との集団における付き合い方の雛形を手に入れてもらいます。私たちは、誰もが楽しく過ごせるよう、また、将来の人間関係作りに役立つスキルを身に付けてもらえるよう、子どもたちの遊びや友達関係を見守っています。
引用文献
村岡玲子・霜田浩信(2021).発達障がい児における課題分析に基づく実態把握と支援の検討 群馬大学共同教育学部紀要 70,145-163.