運動エフェクトを通して情緒面の成長を促すとともに、学習サポートを充実させ適応的な学習態度を身に付ける-応用行動分析によるルール支配行動と刺激統制法を用いた支援-

 明るく活発な性格で、様々な活動に積極的に取り組み、楽しそうに過ごしています。自由遊びの時間は、挟みドッジボールや8の字鬼等、身体を動かして遊ぶことが好きです。「ぼくも入れて」と元気よく言って仲間入りし、友達との遊びを始めることが上手です。挟みドッジボールでは、相手の投げたボールを上手くよけられた時や、強い子にボールを当てることができた時にとても喜んでいます。また、お絵描きや読書をすることも好きです。お絵描きでは、恐竜の本を見ながら細かな部分まで模写し「上手にできた」と嬉しそうに見せてくれました。読書では、動物の本や科学の本等、興味のあるページをじっくりと読み、覚えたことをよく話してくれます。今後も、様々な活動を通して友達との距離の取り方を身に付けてもらい、友達との関係が上手くいくよう支援していきます。

 戸外活動では、様々な遊具に興味を示し、積極的にチャレンジしています。カルチャービレッジの龍の遊具では、何度も上ってローラー滑り台で遊び、ペアの子と仲良く過ごすことができました。クレイジーバネットでは、ティーバッティングや大きな滑り台、ボール相撲等、「次は○○をやりたい」と積極的に自分のしたいことを伝え、汗びっしょりになりながら活発に過ごしていました。138タワーでは、513段の階段上りにチャレンジし、最後まで上りきることができました。上った直後も「そんなに大変じゃなかったよ」と元気いっぱいでした。本児は、前向きな性格で、様々なことに積極的にチャレンジできる反面、危険認識が弱かったり、興味を惹かれると勝手に輪を離れてしまったりする等、目を離せない行動も多く見られます。今後は、安全面への意識を高めてもらうとともに、集団行動に伴うルールをしっかりと守ることができるよう、経験を通して少しずつ適応的な行動を身に付けてもらいます。

 クッキングでは、ココアケーキ作りをしました。「こうやって作るんだね」と様々な調理過程に興味を示し、「○○やりたい」と積極的に参加してくれました。グループで協力して材料を量ったり、混ぜたりして生地を作り、電子レンジの前で皆と一緒にカウントダウンしたりして完成を待ちました。そして、フルーツや生クリームをトッピングした後、皆で試食しました。本児は、自分の番の時にしっかりと役割を果たすだけでなく、友達が混ぜている時にも「ぼくが押さえててあげる」と自分にできることを考えて行動に移してくれる等、協力的に作業を進めていくことができました。今後もクッキングの機会を提供し、活動を楽しんでもらうとともに、友達と協力して成し遂げる経験を重ねてもらいます。

 工作では、「ぼく、工作大好き」と積極的に参加してくれました。ペン立てを作った際、毛糸を編み込む作業では、やり方が分かると黙々と取り組み、最後までやりきることができました。装飾では、友達の作った物を参考にしながら「ぼくは○○にしようかな」「○○もいいな」とデザインを楽しそうに考えていました。また、イメージを形にすることが得意で、出来上がった際には、自分の作品について工夫した所を詳しく話してくれました。今後も、本児の得意な活動の一つとして楽しんでもらい、自己を表現する力を高めていきます。

 運動エフェクトでは、どの種目も積極的に取り組み、がんばっています。記録会では、いつも新記録を目指し、前向きにがんばっています。ドリブルでは、ボールのコントロールが上手になり、82回できるようになりました。合格の100回までもう一息で、がんばっています。短縄では、前跳びの初回記録は13回でしたが、徐々に記録を伸ばして100回に到達し、合格することができました。現在は、自由時間にも次の課題である二重跳びの練習に励んでいます。集団遊びでは、ルール理解力があり、ルールに沿って楽しむことができています。サッカーのパスゲームでは、以前よりもコントロールを考えながらも力強く蹴り返すことができるようになり、より楽しめるようになりました。ドッジボールでは、経験を重ねたことにより、以前に比べボールを遠くまで投げられるようになり、上手になりました。「外野をやりたい」と手を挙げることが多く、積極的に参加しています。運動は本児の得意な分野であるため、今後も様々な経験を積み重ねてもらうことでさらに力を引き出し、自己肯定感を高めていきます。

 学習の時間は、宿題や公文に取り組んでいます。学習内容はしっかりと理解することができており、その気になれば自分で進めていくことができます。また、算数の計算問題が得意で、スラスラと解くことができています。今後も丁寧に学習支援を実施し、できることを増やしていきます。

 気になる点は、運動エフェクト中に思い通りにならないと泣く点、学習時に集中力が続かない点です。運動エフェクト中に思い通りにならないと泣く点については、勝敗のある遊びで負けた時や記録会で新記録が出せなかった時、思ったより上手くできなかった時などに生じます。本児は思い通りにならなくて感情的になってしまっても気持ちの切り替えがとても早く、活動に参加できなくなることはありませんが、今後は感情のコントロール力を身に付けていくことが大切です。したがって、以下の3つの支援を実施し、改善を図っていきます。1つ目は、ルール支配行動を用いてすべき行動をルールとして伝えます。具体的には、弊所には、運動エフェクト時のルールとして「泣かない、怒らない、途中で止めない」というものがあります。ルールの提示と共に、行動の重要性を言語化し、しっかりと守ろうという意識を高めていきます。2つ目は、プロンプト(行動を促す補助刺激)を付加し、適応的な行動が生じやすくなるようにします。勝敗のあるゲームをする前や記録会の前等、感情的になることが予想される場面の直前に声掛けをしておくことで、適応的な行動を引き出します。適応的に振る舞うことができた場合はほめ、その行動を強化していきます。3つ目は、思考の転換のサポートをします。具体的には、結果以外の部分に着目した声掛けを実施することにより、結果のみにこだわるのではなく過程にも目を向けられるようにしていきます。また、少しずつ認知面にも働きかけていきます。具体的には、本児の気持ちを受け止めつつ、より柔軟な別の考え方を例示することで思考の柔軟性を高めていきます。このような接し方をしていくことで、思うようにいかない状況にも経験を通して少しずつ慣れてもらい、感情のコントロールが上手くできるようにしていきます。

 学習時に集中力が続かない点については、学習の準備はすぐにしてくれますが、話したり手遊びをしたりし、なかなか学習に取りかかることができません。また、集中力の持続時間が短く、一旦学習を始めたとしても、またすぐに手が止まってしまいます。また、ソワソワしたり離席したりすることも多く、落ち着いて取り組むことができていません。これらの点を改善するため、以下の支援を実施していきます。まず、刺激統制を行います。机の上に出す鉛筆と消しゴムは1つずつというルールを設定したり、他の子が目に入らないような席にしたりし、集中しやすい環境を整えます。また、小さな目標を設定することで、集中力の持続時間を少しずつ伸ばせるようにしていきます。ここまでの様子から、ゲーム形式のような声掛けをしたり、がんばって課題を進めている時にほめたりすると、やる気が増すことが分かっています。今後も「そのくらいならできそうだ」と感じてもらえるような小さな目標を設定してやる気をもってもらい、それを達成する度にほめて良い行動を強化していきます。離席については、学習前の運動エフェクトの時間にしっかりと身体を動かせるようにして運動負荷を増やすことで、学習時のソワソワと落ち着かない状態を改善していきます。

 本児は、どの活動にも積極的に参加し、楽しそうに過ごしています。今後も、本児の「もっと○○ができるようになりたい」という気持ちを大切にしながら、良い面をさらに伸ばしていくことができるよう支援していきます。また、プログラムを通して情緒面の成長を促したり、学習姿勢の改善を図ったりし、本児のもっている力をさらに引き出すことができるよう支援していきます。

Juri F.