運動エフェクトを通して、身体の抑制力を高める

 通所し始めてから半年程経ち、教室での活動にも慣れ、楽しそうに過ごしています。様々な活動に積極的に参加してくれており、多くの面で改善が見られます。以下にこれまでの改善点を自由遊び、戸外活動、運動エフェクト、学習、発表の5つの場面に分けてお伝えします。

 自由遊びの時間は、友達と一緒に遊ぶことが大好きです。明るく積極的な性格で、友達からも好かれています。初めの頃は、同じ学校の友達と遊んでいましたが、徐々に交友関係が広がり、仲の良い友達が増えました。「〇〇君、一緒に遊ぼう」「〇〇ちゃん、入れて」と自分から声を掛け、仲良く過ごしています。また、「今日〇〇君来る?」と友達に会うことを楽しみにしている発言が多いことからも、友達と楽しく関わることができていることが伝わってきます。今後もこれまでと同様、友達と関わりながら楽しく過ごしてもらえるよう、見守り・仲介を続けていきます。

 戸外活動は、公園に行くことをとても楽しみにしています。公園では、鬼ごっこやバドミントン、探検ごっこ、サバイバルごっこ等をして過ごしています。初めの頃は、友達と一緒に遊んでいるようで実際は別々の遊びをしていることがよくありましたが、次第に友達のしている遊びに興味をもつようになり、「友達と同じ遊びをしたい」、「友達と同じ物を作りたい」という気持ちが出てきました。また、友達と一緒に落ち葉を集めて大きな山を作ったり、おままごとをしたりする等、友達と楽しさを共有できるようになりました。今後も公園遊びを通して、思いっきり身体を動かす経験や自然に親しみながら遊ぶ経験をしてもらい、公園だからできることを十分に楽しんでもらいます。雨が降り公園で遊べない日は、教室で工作をしています。初めの頃は作りたがらず立ち歩いていましたが、次第に「どうやって作るの?」「手伝ってください」と自分で作ろうとがんばるようになりました。特に、ストローのコースター作りや曼荼羅模様作りでは、真剣な表情で黙々と取り組んでいました。完成するまでに長い時間がかかった分、完成した時の表情に達成感が表れていました。

 運動エフェクトは、初めてのことにも挑戦できるようになり、「もっとやりたい」という発言が多くなりました。初めの頃は、上手くできないことを隠すようにふざけてしまったり、やったことのない種目は「やらない」と言い張ったりしていましたが、徐々に参加率が上がり、最近は全種目に参加してくれるようになりました。特に上手になったことは長縄です。小波ジャンプの練習で真上にジャンプできるようになり、回旋ジャンプもできるようになりました。また、身体を動かすことが好きで、集団遊びに積極的に取り組んでいます。高鬼や色鬼(指定された色のマットのみで行う鬼ごっこ)、ハンカチ落とし、椅子取りゲーム等のルールが分かるようになり、ルールに沿って楽しむことができています。今後も楽しく運動してもらい、できることを少しずつ増やしていきます。

 学習の時間は、初めの頃は「やらない」と言って皆と一緒に机に向かうことができませんでしたが、別の場所で指導員と1対1で取り組んでくれるようになりました。最近は皆と一緒に机に向かい、落ち着いて取り組むことができるようになりました。公文は一定枚数ずつコツコツと取り組んでいます。数の表を見ながら一人で問題を解くことができ、がんばっています。また、日々の積み重ねにより、学習習慣が身に付き自分から準備をしてくれるようになったり、集中力の持続時間が伸び早く終えられるようになったりしています。今後も丁寧にサポートし、力をさらに伸ばしていきます。

 発表は、本児の大好きな活動です。帰りの会の発表では、自分の番ではない時は静かにするというルールを守れるようになりました。初めの頃は、内容を盛り込み過ぎていましたが、最近は一番伝えたいことを一言でまとめられるようになり、発表が上手になりました。また、Show & Tellでは、家で作った物やお気に入りの物等を持ってきて、ほぼ毎回発表してくれています。空き時間に発表のための原稿を作り、皆の前で堂々と発表することができています。初めの頃は「〇〇と書いてあります」や「黄色です」等、見た目のことを中心に話していましたが、いつ・どこで・だれと等の観点が増え、発表が上手になりました。今後も発表を継続してもらい、さらに自信をもってもらうとともに、発表の質を少しずつ向上させていきます。

 気になる点は、三点あります。一点目は、特定の友達とのケンカが多いことです。「いやだ」「あっそ」「もう遊んであげない」等、わざと相手を怒らせるようなことを言ったり、相手が怒ることを面白がって執拗に嫌がらせをしたりしてしまいます。二点目は、声の大きさの調整が難しいことです。その場の状況による声の大きさの調整がなく、常に大きい声で話してしまいます。特に、仲の良い友達がいるとテンションが上がり、大騒ぎしてしまいます。三点目は、力加減の調整が難しいことです。遊びの中で友達を押し倒してしまったり、鬼ごっこの時に力強くタッチしてしまったりします。これらの気になる点の原因の一つとして、抑制力の弱さが考えられます。子どもは、様々な経験の中での周囲の大人や友達との関わりを通して、自分の思いを通せることや通せないことがあることを学び、自分で自分の行動をコントロールする力を身に付けていきます。この自己制御には「嫌なことや友達と異なる点等、自分の意見をはっきりと言うこと」「自分のやりたいことに友達を誘って遊ぶこと」等の自己主張と「順番を待つこと」「人に譲ること」「ルールを守ること」「悔しいことや悲しいことに感情を爆発させないこと」等の自己抑制があり、自己主張と自己抑制のバランスのとれた発達が大切だと言われています。本児のこれまでの様子から、自己主張の力は十分にもっています。今後は自己主張できる良さはそのまま残しつつ、自己抑制の力を少しずつ伸ばしバランスを整えていきます。身体の抑制ができるようになると、心の抑制もできるようになると言われているので、まずは、運動エフェクトを通して身体の抑制力を伸ばしていきます。具体的には、頭にカップ(頭にのせたカップが落ちないように歩く)、平均台歩きのようなゆっくりとした動きの種目や片足立ちのようなバランスをとって動きを止める種目、ビーチフラッグス(床に伏せて準備し、手を○回叩いたら走ってカップを取りに行く)、Go-NoGo課題(カップの色ごとに「赤は1回叩く」「青は休み」等と決め、リズム打ちをする等)のような判断の必要な種目、スクワットや模倣遊びなどお手本のペースに合わせて動く種目等、運動を楽しんでもらう中で身体の抑制力を育んでいきます。また、ルールの説明や友達の発表を聞く時等、自分の話す番でない時には、口を挟まず静かにするというように、必要でない言葉は出さない抑制力も育んでいきます。その際、がんばった点や良かった点を具体的に伝え、成功体験を積み重ねられるよう配慮します。また、運動エフェクトを通してできるようになった抑制を他の場面にも生かせるよう支援していきます。

 本児は素直な性格で、様々な点において成長が感じられます。引き続き、楽しい環境を提供し成長を促すとともに、落ち着いて過ごすことができるよう、抑制力を伸ばす支援をしていきます。

Juri,F.