連続強化スケジュールにより、行動の切り替えを習慣化する

 人懐っこい性格で、自分から指導員との関わりを求め、楽しそうに過ごしています。自由遊びの時間は、本を読んだり、おままごとをしたり、恐竜の人形や車のおもちゃで遊んだりしています。また、男性指導員に「こちょこちょして!」「高い高いして!」と関わりを求めることが多く、スキンシップを楽しんでいます。今後も、本児のしたい遊びを通して、人と関わる楽しさを経験してもらい、関わりがさらに広がっていくよう支援していきます。

 生活面では、入室作業や帰りの準備がスムーズにできるようになりました。以前は車からなかなか降りてくれないこともありましたが、最近はすぐに降りられるようになりました。また、帰りの準備の際には、声掛けをするとすぐに応じてくれる日が増えており、皆と同じタイミングでの退室に間に合うようになってきました。日々の遊びを通して信頼関係が向上したことにより、声掛けに対する反応も日に日に良くなっています。また、困った時には「手伝って!」と自分から助けを求めるスキルも既に身に付いています。

 運動エフェクトでは、全種目に参加し、楽しんでいます。以前は遊びからの切り替えができず、身体ガイダンス(身体誘導)により整列をしていましたが、最近は言語教示のみで整列することができるようになりました。反復横跳びの記録会では、繰り返し取り組むことにより、動き方がスムーズになり、少しずつ記録を伸ばしています。好きな種目はジャンプ系の種目で、声を上げて楽しんでいます。サッカーのパスゲームでは、転がってきたボールを直接蹴り返すことができるようになり、上手になってきました。ドッジボールでは、緩やかに飛んできたボールを落とさずにキャッチできるようになりました。また、列に並ぶ、座って待つ等の運動以外のスキルも伸びており、適応的に行動することができるようになりました。今後も様々な運動を楽しんでもらい、できることを増やしていきます。

 学習の面では、自分でランドセルを持ってきて席に着くことができており、学習に取り組むことが習慣化しています。以前は気がそれて手が止まったり、こだわりにより字を何度も書き直したりしていることも多くありましたが、声掛けの回数を増やしたり、声掛けの仕方を工夫することによって少しずつ改善されてきました。最近は宿題をすべて終えられる日が増えており、集中して取り組める時間も伸びています。今後も宿題をすべて終えられるよう、丁寧に学習支援を実施していきます。

 気になる点は、宿題がすべて終わらなかった時の行動の切り替えです。学習の終了のあいさつの時間になっても、宿題の途中だとなかなか止めることができません。この点の改善を図るため、強化スケジュールの観点からの支援方法をお伝えします。強化スケジュールには連続強化スケジュールと部分強化スケジュールの2種類があります。連続強化スケジュールは、行動する度に好子が出現したり嫌子が消失したりすることです。例えば自動販売機にお金を入れるとジュースが出てくる、ボタンを押すとテレビが映るなどがあります。部分強化スケジュールは、何回かに1回だけ、行動に随伴して好子が出現することです。例えば、くじ引きをして当たりが出たりはずれたりする、魚釣りで魚が釣れたり釣れなかったりするなどがあります。部分強化スケジュールは連続強化スケジュールよりも消去抵抗が高いとされており、やったりやらなかったりという部分強化スケジュールでは、なかなか行動を変えることはできません。したがって、運動エフェクトの開始時の切り替えができるようになった方法と同様、連続強化スケジュールにより、行動の切り替えを習慣化していきます。現時点、本児は、学習終了時刻で宿題を止めるよう促されても自分が続けたいならそのまま宿題を続けられるという誤学習が見られます。それを改善するために、今後は、学習の時間が終了した時点で、学習を終了し、次の行動へと切り替えられるようにしていきます。初めのうちは上手く切り替えられませんが、連続強化スケジュールにより、徐々に切り替えができるようになります。取り組みの前提として、以下の点に留意します。「あと〇分で終わりだよ」と予告する等、時間を意識して取り組むことができるよう予め声掛けをしていきます。また、学習終了の声掛けがあった時には、宿題の途中でも手を止めて行動を切り替えることをルールとして伝え、ルール支配行動による適応的な行動を引き出していきます。その際、運動エフェクトの時と同様、初めは身体ガイダンス(身体誘導)を用いますが、できるようになってきたら徐々に言語教示にシフトしていきます(プロンプトフェイディング)。また、適応的な行動に対し「今日はすぐに止めることができたね」「頑張ったね」とほめることで、適応的な行動を強化していきます。

 本児は、この半年間で関係性がさらに深まったことにより、声掛けに対する反応が向上し適応的な行動が増えています。今後も本児の良い面をさらに伸ばすとともに、連続強化スケジュールにより行動の切り替えをスムーズにすることができるよう支援していきます。

Juri F.

戸外活動

前の記事

犬山城下町
研究会

次の記事

研究会(2024/7/5-6)