話を聞く態度をルール化し、意識して行動を正すことができる

 明るく穏やかな性格で、人と関わりながら楽しそうに過ごしています。自由遊びの時間は熊の人形で遊ぶことが好きです。「今日はどんな話にしようかな」と毎日様々なテーマのストーリーを考え、熊の人形で遊ぶことを楽しみにしています。遊園地等、家族で出掛けた後は、その時の思い出をストーリーにして再現することが多く、自分の経験をよく話してくれるようになりました。また、仲の良い友達と二人で遊んでいることが多くあり、友達との関係の取り方が上手になってきました。友達の考えたストーリーに合わせてあげたり、友達との会話がかみ合うようになったりし、本児もその友達も楽しそうに盛り上がっています。今後も友達との関係が上手くいくよう見守り、必要な時にアドバイスをしていきます。

 コミュニケーション面では、Show & Tellに積極的に取り組むようになり、力を伸ばしています。Show & Tellでは、5つの観点について予め考えて話すことがルールです。以前は、「これは何?」「「誰にもらったの?」と質問し、本児が答えてくれたことを指導員が文にして原稿を作っていましたが、最近は、一人で考えて原稿を書くことができるようになりました。発表時には、スラスラと原稿を読み、上手に発表することができています。友達からの質問にもしっかりと答え、回数を重ねるにつれて発表するスキルがどんどん上達しています。また、Show & Tellに取り組むようになってから、友達との相互作用が増えました。具体的には、車の中で友達との会話に加わることが多くなったり、友達同士の会話中の言葉と関連する自分の経験について友達に話したりするようになっています。また、話す内容もより詳しくなり、聞き手に分かりやすく伝えることができるようになっています。今後も良い経験を重ねてもらい、さらに発表スキルと相互作用力を向上させていきます。

 運動面では、繰り返し取り組んでいる片足屈伸ができるようになったり、V字ドリブルではしっかりとV字型にボールをつくことが上手になったりしています。鳥かごでは、集中して取り組むことができるようになり、最後まで残ることができる時が増えています。ドッジボールでは、初めの頃はわざと当たることも多くありましたが、最近は積極的にボールをキャッチするようになり、楽しんでいます。また、ボールを投げることも少しずつ上手になり、より遠くまで投げられるようになりました。今後も様々な運動を楽しんでもらい、運動能力を向上させるとともに、友達との関わりを楽しんでもらいます。

 学習面では、切り替えが早く集中して取り組むことができています。公文では、コツコツと取り組んでおり、中学校の教材に入りました。学習内容の理解力があり、新しい内容になってもスラスラと進めることができています。英語では、決められた量をきちんと取り組み、力を伸ばしています。今後も丁寧に学習支援を行い、自信をもつことができるよう支援していきます。

 気になる点は、話を聞く態度です。手遊びをしていたり、自分の世界に浸って別のことを考えていたり、姿勢が崩れたり、友達と遊んでしまったりすることが多く、話を聞こうとしていません。話を聞いていないため、運動中に皆が立って準備しているのに一人だけ座っていたり、皆が後転をしているのに一人だけ前転をしてしまったり、帰りの会で指導員が話している最中に「早く次にいってください」「(帰りの会の終わりの)あいさつは誰ですか?」等の不適切発言をしたりしてしまいます。また、集団への指示は殆ど聞いておらず、友達からも「さっき言われたばかりでしょ」「聞いてなかったの?」と言われていることが多くあります。本児自身はあまり気にしていないようですが、話を聞くことができれば本児のもっている力をさらに引き出すことができると考えています。そこで、行動分析的アプローチの観点から支援を実施し、話を聞く態度の改善を図っていきます。具体的には以下の2点に取り組みます。1つ目は、刺激統制法を用いて不適切行動を減らします。刺激統制法とは、なくしたい行動、減らしたい行動に先行する弁別刺激があれば、その弁別刺激を本人の身の回りから撤去する方法です。話を聞く際、本児はいつも列の端に座っていますが、指導員からあまり見られていないと感じてしまい、不適切行動の抑制ができていません。したがって、指導員の目の前に座ってもらうことで傾聴意識を高めたり、友達と向かい合わないようにして刺激を減らしたりすることにより、不適切行動を減らしていきます。2つ目は、適応行動を引き出す手続きを実施します。本児自身、適応的な行動レパートリーはもっており、意識することができれば適応的に行動することはできます。しかし、現時点では持っている能力を自発することができていません。したがって、予めの声掛けを増やしたり、行動の重要性を言語化して予めルールとして明示したりして本児が意識しやすいようにし、適応行動を引き出していきます。また、できた時にはほめて即時強化し効果を高めていきます。

 本児は、対人関係面、運動面、学習面等、様々な面で成長しています。今後も良い点をさらに伸ばすとともに、話を聞く態度を改善することができるよう支援し、本児のもっている力をさらに引き出すことができるよう支援していきます。

Juri F.