研究会(7/5-6)

読み書きに困り感のある子に対する支援の可能性を広げるため、7/5-6の2日間の日程で研究会に参加しました。

今回、13名の子が、主に以下の4つの課題に取り組みました。

1.漢字書字・探索課題

 漢字を写して書いているときのその部分への注目度合いを調べました。書いているときは、手元と漢字を見比べることが多くありますが、どこをどの程度見ているかがまだわかっていないことが多いです。今回は知っている漢字と不完全な漢字を写して書いていただいたときに、両者に含まれるパーツへの注目の仕方の違いについて、目の動きから調べました。さらには漢字を書いているときのからだの動き方についてもビデオを撮影して、運動の解析を行いました。また、書くだけではなく不完全な漢字をまとまりの中から探して選ぶ探索課題を通して、漢字を書くときに生じる見ることの難しさも調べました。

2.目と手の連動を測定する課題(視覚運動協応課題)

 制限時間内に点と点をつなぐ線引き課題や、図形のなぞり課題、図形の線通し課題を行う際の正確性や所要時間を調べました。書くときには目と手の連動動作が必要になりますが、それらの発達の様子はまだわからないことが多くあります。そのため、今回の課題と上記の漢字課題で実施した運動の解析を組み合わせることで、書きが上手なお子さんと苦手なお子さんの比較をしつつ、書き上手になるために必要なチカラを調べました。

3.注意の復帰抑制課題

 画面の一方に講義動画、他方に妨害動画(花火の動画)を同時に提示します。そのときに妨害動画に気をとらわれすぎずに、講義動画の内容を理解できるかを調べました。講義動画を見ていた時間やその動画に留まっていた時間や割合を視線機能計測から調べつつ、実際にお子さんたちに講義動画に関するクイズにも回答いただきました。お子さんたちが妨害動画を見てしまう回数や長さ、講義動画へと戻るタイミングと講義内容の理解の関係を調べました。

4. 音の聞き分け課題(マガーク効果に関連する課題)

 音声とその音声を出すときの口の形が一致、不一致の場合に、聞き取る音声に混乱が生じるかを調べました。表情を見るときに多くの方が目に注目しますが、日本人の方は口に注目することも多いようです。一方で口に注目してしまいやすい傾向があるお子さんたちには、音の混乱が生じやすくなるのかということを、目領域や口領域への注目の頻度や聞こえた音への選択の様子から調べました。

研究責任者

早稲田大学 人間科学学術院

大森幹真准教授

研究計画の名前

①「第一・第二言語の発達に応じた問題行動の出現頻度に関する研究」

②「意思決定・選択行動場面における視線機能と行動指標との関連の分析研究」

弊所が大森先生に依頼した相談内容の抜粋
4/21
 今までに見たことのない難しい漢字を見たときの定型発達児と書きに困り感のある子の視線に違いがあるかないかが気になります。可能でしたら違いを調べていただき、支援の可能性を教えていただきたく存じます。
 漢字書字における時間情報の空間情報への変換(Omori & Yamamoto,2018)にて、漢字の構成を学習する方法は非常に効果的と存じますが、私が感じているのは、分割した部分が覚えられない子に対してはどのような支援方法があるのだろうかということです。キヘンやサンズイ等の編は見る頻度が高く正しく転写できますが、旁に関しては種類が多く正しく転写できない子が多数います。例えば「演」を転写する際に「黄」と同じ由を書いたり、「役」の又と「後」の夏足を間違えたり等、このような微妙な間違いは、注目の仕方に違いがあるのではないかと存じます。
6/28
 ご作成いただいた課題「漢字書字中の視線機能の様子」について、高難度の漢字と比較的低難度の漢字は、いずれも中心部分を注視していますが、高難度の漢字の中にある低難度の漢字は注視の程度が低く出ています。これは高難度の漢字の中にある低難度の漢字が既知の漢字であるからと存じますが、書きに困り感のある子は既知の漢字を認知し辛く、高難度の漢字の中にある既知の漢字に対し初めて見るような注視行動を執るのではないかと存じます(全体の中から部分を認知することが難しい)。「誤漢字の視覚探索」では、注意力への困り感が現れると存じます。「書」「手」「寺」「象」「場」の横画やはらいが1本増えたり減ったりしてしまうのは、注意力への困り感により、横画やはらいがたくさんあるという認知に留まっているからではないかと存じます(部分を正しく捉えることが難しい)。また、書きの取り組みでは、課題の漢字を毎回違う書き順で書くことが予想され、書きに困り感のある子は、絵を写すかのような難度を感じながら漢字を書いているのではないかと存じます。
 一方、そんな困り感がある子も、漢字の見え方がノーマルならば、負担感が大きく減らせるのではないかと存じます(見え方は変わらないため、ノーマルな見え方をその子に伝えることができれば)。例えば、「十」という漢字に対し、2本の線が交差していると認知できない子は、交差していると認知できる子に比べ大きなハンディを持っています(敢えて難しく書いているよう)。
 更に、問題は「書」という漢字がどのように構成されているのかをしっかりと認識する前に、次の漢字を覚えなければならない環境にあると存じます。書きに困り感を持つ子の環境は、「書」は「ヨ」に似たものの下に二本の横画を書くと覚える前に、次の漢字を覚えなければなりませんから、やがて漢字が嫌いになり、最終的には書くこと自体も嫌いになってしまうのではないかと存じます。
 研究会への参加で、子どもたちの持っている問題点が明らかになり、それに対する効果的な支援方法を教えていただけましたら大変嬉しいです。