最近接発達領域を踏まえた学習支援を実施してできることを増やし、学習に前向きに取り組めるようになる
穏やかで人懐っこい性格で、様々な活動に参加し楽しそうに過ごしています。自由遊びの時間は、友達と一緒に挟みドッジボールをしたり、指導員とお話をしたり、自分でルールを考えた遊びを友達と一緒にしたりしています。真面目でルールをしっかりと守ることができることから、友達との関係は良好で、仲良く過ごすことができています。また、遊びの中で嫌な思いをした際には、指導員に自分から言いに来ることができています。今後は、アサーション・トレーニングを実施し、自分の思いを相手に伝えられるよう支援し、より楽しく過ごせるようにしていきます。
コミュニケーションの面では、活動の流れ等で分からないことがあると、自分から質問することができています。困った時に周りの助けを借りて上手く対処することができています。また、Show & Tellにも時々取り組んでくれています。5つの観点について簡潔に話したり、友達からの質問に答えたりすることが得意で、分かりやすく伝えることができています。今後も、得意な面の一つとしてさらに力を伸ばしていくことができるよう、支援していきます。
運動エフェクトでは、どの種目にも真面目に取り組み、がんばっています。ドリブルの記録会では、ボールを上手につくことができ、ドリブル100回を合格することができました。現在は、V字ドリブルに挑戦しています。ボールの操作に少しずつ慣れてきて、記録を伸ばしています。また、「これを合格したら、次は何になるの?」と、これから先のことも楽しみにしてくれています。バッティングでは、飛んできたボールをしっかりとバットでとらえることができ、上手です。本児も自信をもっており、自由時間にも「野球やりたい」と言うことが多くあります。集団遊びでは、鬼ごっこ系の遊びが好きです。特に高鬼が好きで、積極的に島から島へ移動し、楽しんでいます。また、鬼になった時も相手の隙を逃さず、上手に捕まえることができています。今後も運動習慣をつけ体力の向上を図るとともに、様々な運動に取り組んでもらい運動技能の向上を図っていきます。
学習の面では、切り替えが早く、自ら準備して始めることができています。九九の練習をがんばっていて、順唱及び逆唱はすべて合格することができました。公文では、かけ算の筆算の練習をしています。問題の解き方は理解しており、がんばっています。今後も、丁寧に学習支援を実施し、できることを増やしていきます。
気になる点は、学習に対する苦手意識があり、やる気が低下している点です。公文に取り組む際、問題を難しいと感じているのか、手が止まっていることが多く、ぼーっとしていることが多くあります。そこで、学習に対する苦手意識を改善するため、最近接発達領域を踏まえた学習支援を実施してできることを増やし、前向きに学習に取り組むことができるように以下のように支援していきます。ロシアの心理学者、ヴィゴツキーは、最近接発達領域(ZPD)について、教育学は、子どもの発達の昨日にではなく明日を目指さなければならない。そのときにのみ、教育学は、最近接発達領域のなかでいま横たわっている発達過程を、教授―学習過程のなかで呼び起こしうるのである。未成熟の領域は、成熟しつつある過程の領域であり、子どもの最近接発達領域を成すという概念を提唱しました。(岡花他,2009)つまり、最近接発達領域とは、自分一人ではできないが、他者と一緒にならできるレベルを指します。大人と一緒にできたことは、その子ができたことと捉え、簡単すぎず難しすぎない課題設定をすることが大切です。また、ブルーナー等は、学習者の周りにいる援助者が、課題解決のモデルを示したり、課題解決のために注目すべき特徴を示したりすることによって、子どもはひとりで解決できない、より高次の課題を遂行できると述べ、最近接発達領域における援助のあり方を、「足場かけ」と論じました(岡花他,2009)。足場かけとは、最近接発達領域による知識発達のために大人が果たす役割のことです。これには、3段階あります。第一段階は、しっかりと補助する段階です。この段階では、大人が問題を解く所を隣で見ていてもらったり、大人と一緒に問題を解いたりします。第二段階は、徐々にサポートを減らす段階です。この段階では、問題を解くヒントを提供した上で、自分で解いてもらいます。また、間違い直しでは、間違っている部分を明確に示した上で、子ども自身に解いてもらいます。どこが間違っているのか考える負担を減らし取り組みやすくします。第三段階は、一人でできるようになる段階です。一人で問題を解いてもらいます。また、間違い直しでは、どこが間違っているか自分で見つけてもらい、自分の間違いやすいところに気付いてもらい学習効果を高めます。このように、第一段階から第三段階へ徐々に移行し、支援の度合いを少しずつ減らしていきます。一人でできる第三段階を目指し、まずは、第一段階から始めていきます。その際、本児自身が「足場」を見つけ出し、創造していく過程を見落とすことがないよう配慮します。段階を上げた際に上手くいかない場合は、一旦元の段階に戻る等、柔軟に対応し、前向きに取り組むことができるようにしていきます。また、取り組みを重く感じないよう、取り組む時間を予め設定したり、内容を適度に調節したりします。日々の学習を通じて、できることを増やしていくことにより自己効力感を高め、学習に対するイメージを変えていくことができるよう支援していきます。
本児は、様々な活動に取り組み、楽しそうに取り組んでいます。今後も本児の良い面をさらに伸ばしていくとともに、最近接発達領域を踏まえた学習支援により、学習に対する苦手意識を減らし、前向きに取り組むことができるよう支援していきます。
引用文献
岡花祈一郎・多田幸子・浅川淳司・杉村伸一郎(2009).保育における最近接発達領域に関する検討 幼年教育研究年報 31,131-137.
Juri F.