友達との関りが少ない自閉スペクトラム症児に対し友人関係を確立する支援-応用行動分析のフリー・オペラント技法により自発性を引き出す支援-

 穏やかな性格で、様々な活動に一生懸命取り組み、がんばっています。自由遊びの時間は、お絵描きや紙飛行機飛ばし、色の異なるマットをジャンプする遊び等をして遊んでいます。指導員からの誘いに応じ、絵辞典を見ながら絵を真似して描いたり、描いた絵に色を塗ったりしています。本児から「○○したい」という意思表示はまだありませんが、指導員が提案した遊びを行い、楽しく過ごしています。友達との関わりについては、まだやりとりは難しいですが、指導員が仲介することにより平行遊びをすることができています。今後も、指導員が間に入って友達との橋渡しを行い、友達との関わりを増やしていくことができるよう支援していきます。

 コミュニケーションの面では、あまり話すことはありませんが、帰る前にトイレに行ったかどうか確認すると「行った」「まだ」と答える等、指導員からの声掛けに応答することができています。また、帰りの会では、初めて知った言葉の発表をしていますが、以前に比べ声が少し大きくなり、聞き取ることができる部分も多くなってきました。今後も、言葉を使う機会を増やし、相手に聞こえる音量で話すことができるよう支援していきます。

 運動エフェクトでは、どの種目も一生懸命取り組み、がんばっています。反復横跳びの記録会では、線をしっかりとまたぐことを意識して取り組むことができています。最近は、すばやさも増し、動きがスムーズになってきました。キャッチボールでは、緩やかに飛んできたボールを上手にキャッチすることができています。また、投げる際も相手の方へ上手に投げることができています。座り鬼では、一度座って鬼が10を数え始めたら立ち上がって逃げるという動きが自分で判断でき、ルールに沿って楽しむことができました。先日は最後まで捕まらず優勝し、嬉しそうにしていました。今後も楽しく遊びながら運動技能を高めていきます。また、友達と競ったり、協力したりする等、友達と一緒に遊ぶ楽しさを感じられるようにしていきます。

 学習の面では、算数プリントに取り組んでいます。数字を一人で書くことができるようになり、プリントを自分で進めていくことができるようになりました。10までのたし算では、計算ミスもなく、がんばっています。今後も丁寧に学習支援を行い、計算力を高めるとともに、1年生に向けて字を書くことに慣れてもらえるよう支援していきます。

 気になる点は、友達との関わりが少ない点です。本児は、自由遊びの時間は何をしたらよいか分からず困っていることが多くあります。指導員が「○○する?」と誘うと、一緒に遊び始めますが、そこに他の友達が加わっても友達とのやり取りはなく、物を共有して別々に遊んでいる状態です(平行遊び)。ここからは自閉スペクトラム症児の友人関係に関する論文をレビューしながら、本児の友達関係を向上させる支援についてお伝えします。

 辻・田畑(2006)は、人生の初期の段階で療育の体制が整い、子どもを取り巻く環境が安定したものになれば、当然その後の学齢期、成人期といった各ライフステージにおいての支援が行いやすくなると述べています(辻・田畑,2006)。早期発達支援の必要性は、多くの研究者が口をそろえており、できるだけ早期に発達支援を行うことが重要とされています。自閉スペクトラム症児は、社会的な相互反応やコミュニケーションに質的な障がいがあり、仲間関係の形成が容易ではありません(平,2014)。また、自閉スペクトラム症児は、物に主体的に関わることはあっても、人への主体的な関わりは乏しいとされ、指導方法の開発において、人への主体的な関わりを引き出すことが大きな課題となります(荒井他,2007)。本児の自由遊びの様子を見ていると、自分から友達と関わろうとすることはなく、一人でいることが多いです。指導員が遊びに誘うと一緒に遊び始め、指導員から聞かれたことには答えてくれます。しかし、指導員との相互のやりとりはなく、時々自分の話したいことを独り言のように話します。また、他の子が本児のしている遊びに仲間入りしてもやりとりはなく、おもちゃだけを共有しています。現時点、本児は仲間関係の形成が難しく、人への主体的な関わりもありません。Wingは1979年に英国で疫学調査を行い、自閉症の対人関係についてKannerが述べた「孤立型」以外に、より軽症の「受動型」や「積極・奇異型」が存在すると報告しました。また自閉症の徴候を部分的に有している軽症例も自閉症から切り離すのではなく、自閉症を中核とする連続体として考えるべきであるとして、「自閉スペクトラム症」という概念を提唱しました(日戸・藤野,2017)。また、Howlin(1997)は、ASD児は、幼少時には同世代の子どもとの接点を避け、大人やより年少の子どもとの関わりを好むが、成長するにつれ同世代との関係で「自分が人に受け入れられるか、人の輪に入っていけるか、友人をつくれるか」を非常に気にするようになると報告しました。そして、知的遅れがなく症状の軽いASD児者は、定型発達児者よりもかなり遅れて、仲間や友人に対する社会的関心が芽生え始める可能性を示唆していると述べました(Howlin,1997)。また、ASD児の親たちは、友人関係の形成には、本人のモチベーションの関与が大きいと強調しました。3分の1の親は、わが子がひとりで過ごすことを好み、友人関係に関心がないと述べました。残りの親は、友人関係への関心や希望が強いか、または年々強くなってきていると述べました(日戸・藤野,2017)。本児も大人との関わりを好んでおり、遊びに誘うといつも一緒にしてくれますが、自由時間での同世代の子どもとの関わりはありません。しかし、成長するにつれ、仲間や友人に対する意識が変化し、仲間を求めるようになることを予め意識した上でサポートしていくことが大切です。したがって、現時点、友達に関心がないからといってそのままにせず、専門家の下、友達と遊ぶ機会を設定し経験を重ね、友達との関わりを学ぶ機会を設けることで、将来的に本児自身が友達に関心をもった時に経験から学んだことを生かすことができるようにしておくことが大切です。また、母子関係理論の影響を受け、所属や枠組みに含まれる集団との「仲間関係」(中島,2000)から、特定の相手との情緒的な絆に基づく持続的な関係性である「友人関係」(Fine, 1981)への移行においては、他者の視点に立つ能力の発達とともに対人感情の発達も重要(Selman, 1981)であると考えられています(日戸・藤野,2017)。他者の心を推察する心の理論について、定型発達児は4~5歳頃に通過しますが、ASD児は遅れる傾向にあります。また、日戸・藤野(2017)は、インタビューや検査結果から以下のように述べています。母親の報告では、ASD群は子どもが友人として挙げている人数が有意に少ないだけでなく、多くのASD児は友人の認識の仕方が独特であり、自分を相手にしない人物や、相互交渉なく一緒にゲームをして過ごす相手などを友人と呼んでいた。また、ASD児が友人と過ごす場は、家か学校の中に限定され、地域の中で共に過ごせる相手は少なかった。また、母親の認識によると、友人関係の持ち方についてASD群は友人の人数、友人と過ごす時間、会う頻度すべてが定型発達群より有意に少なかった。友人との過ごし方も両群は異なり、定型発達群では屋外遊びや映画・会食など家庭・学校外での活動が多かったが、ASD群では学校や家庭の中でボードゲームやテレビなどで過ごすことが多く、そこでの会話は少なかった。また、定型発達群は友人との共同遊びの時間が長く、ASD群は平行的に遊ぶ時間が長い傾向がある。またASD児にはポジティブな感情表出が時間経過に伴って減少する傾向がみられた。要因として、楽しさを相手と共有する行動の乏しさが挙げられた。また遊び場面のセッション終了後の本人へのインタビューから、親密さに関する内省の乏しさが挙げられた。この研究により、先行研究で母親へのインタビューから示唆された「ASD児特有の友人関係の持ち方」が確かめられた。このようなことからも、ASD児の友人関係の維持には、サポートが必要であることが改めて確認された。また、本人に友人関係について尋ねると、名前の挙がる人数は相対的に少なかったが、多くは現状に満足していた。ASD児のほとんどの親は、わが子の友人関係の異質性に言及しており、そのうちの半数は相互交渉の乏しさに触れていた。また、親たちは、わが子の友人関係の形成と維持にはサポートが必要であると感じており、何らかの取り組みを行っていた。半数近くは、地域での構造化されたグループ活動やクラブが友人関係の形成に役立つと感じていた。教師は担任をしていたASD児が、教室の中で受け入れられていると感じていたが、相互性の乏しさに気づいていた。教師の多くが、ASD児に対する友人関係のサポートは容易ではないと感じており、それを実践している教師は少なかった(日戸・藤野,2017)。これらの結果より、ASD児の友人認識は独特で、定型発達児が友達と認識しないような子も友達だと思っています。また、名前の挙がる人数は相対的に少ないが、本人はそれで満足しています。また、遊びもボードゲームのような決まったやり方があるもの、テレビのような受動的なもので過ごすことが多かったり、平行的に遊ぶ時間が長く、相互のやりとりがないため楽しさを相手と共有することや内省することが少なかったり、相互作用が乏しかったりし、親たちはサポートが必要だと感じています。親の半数近くは構造化されたグループ活動やクラブが友人関係の形成に役立つと感じています。教師の多くは、サポートは容易ではないと感じており、サポートを実践している人は多くありません。したがって、本人の特性を理解してもらえる専門家の下で、構造化されたグループ活動を行いながら、友人関係を形成・維持するサポートが必要です。

 次に、支援方法についてお伝えします。まず、般性好子を確立します。抱っこやくすぐり等の身体接触を伴う遊びを通して関係をつくり、人の刺激が好子(好ましい刺激)として機能するようにします。そして、人と関わると楽しいな、人って温かいなと思ってもらえるようにし、本児自身の人への接近行動をさらに増やしていきます。次に、要求行動を形成します。具体的には、本児の好む遊びを通して「(その遊びを)もう一回やりたい」「もっとしてほしい」と相手に対して要求する行動を形成していきます。そして、要求が出た場合は、その要求を即時充足するようにします。奥田・井上(1999)は、対象児がまれに自発した指導者へのかかわり行動(例えば、決まり切った質問行動)に対して、対象児の要求を即時的に充足する対応(決まり切った応答)を続けることにより、対象児から指導者への質問行動がさらに増加したと述べています(奥田・井上,1999)。今のところ、本児とのやりとりにおいて、指導員が「何する?」と聞いて「○○にしようか」と提案することが多かったり、遊びに必要な物を先に準備したりすることが多いですが、今後は指導員側からのリードを少し控え、本児がより自発的に関わることができるようにします。さらに奥田・井上(1999)は、指導者との相互作用の占有率が安定するようになった役割交代強化期の後期からは、対象児の要求に対して、即時的な対応を控えて、遊びの役割を決定する行動が自発されるのを待つようにすると、対象児は単に遊びのレパートリーを自発するだけでなく、遊びを成立するための役割を決定したり、交代、変更したりする行動も増加したと述べています(奥田・井上,1999)。よって、弊所でも自発的な関わりが増えてきたら、即時対応を控え、遊びの役割を決定する行動を促していきます。例えば、お店屋さんごっこでは、お客さん役と店員さん役を交代しながら遊び、役割行動を決定する行動の自発を促進します。また、遊びのレパートリーを拡大するため、以下の3点の支援を行います。1つ目は、一人遊びの模倣をします。奥田・井上(1999)は、対象児の一人遊びに指導者が追随し並行して遊んでいる時、対象児の一人遊びを指導者が模倣し、対象児からの接近や要求に応じることからレストランごっこの様な遊びに発展していったと述べています(奥田・井上,1999)。本児がしている遊びを模倣し、一人遊びからごっこ遊びに発展するようはたらきかけ、遊びのレパートリーを拡大します。2つ目は、本児の好きな遊びを強化します。奥田・井上(1999)は、対象児がピアノの下に隠れている状況で、指導者はかくれんぼ遊びの要領で対象児の隠れるという行動を強化したことから、かくれんぼが遊びのレパートリーに加えられたと述べています(奥田・井上,1999)。本児は、ジャンプすることが好きでよく遊んでいます。そこで、色の違うマットを池に見立て、池に落ちた際に「ワニが来た~」とくすぐるととても喜び、遊びのレパートリーとすることができました。今後も本児の好きな行動を強化することで、遊びのレパートリーを増やしていきます。3つ目は、フリー・オペラント技法による介入を行います。フリー・オペラント技法による介入を実施することで、指導者自身が強化刺激としての機能をもつようになり、さらに対象児にとってかかわり行動の自発、獲得した遊びのレパートリーの自発を促す弁別刺激(行動のきっかけとなる刺激)として機能するようになります(奥田・井上,1999)。遊びを通して、本児に「一緒に遊ぶと楽しいな」と感じてもらえるようにすると、指導員自身が強化刺激となり、本児の「もっと遊びたい」「一緒に○○したい」という気持ちが芽生え、自発性が向上します。現時点では、指導員側から遊びを提供すれば楽しそうにしてくれますが、まだ自分がしたいことを自分から伝えてくれたことはありません。今後、本児の好きな遊びを通して関係性をさらに深め、本児の自発的な関わりを引き出すことができるようにしていきます。奥田・井上(1999)は、指導場面以外のかかわり行動の自発については、指導開始前、対象児は姉と遊ぶことができなかったが、レストランごっこと同様のやりとりができるようになり、姉と一緒に友達とも遊べるようになったことが母親によって記録された。さらに、学校でも自発的に友達を大なわとびに誘うようになった。このような般化を促進した要因としては、指導場面において、まず対象児から指導者へのかかわり行動の自発を強化し、対象児と指導者の2者間の関係を改善した。その後、指導者との相互作用の占有率が安定するようになった指導中盤より、対象児の姉を対象児と指導者との遊びの中に誘うようにした。そこで、対象児から姉へのかかわり、姉から対象児へのかかわりが成立するように、指導者が対象児と姉の両者にはたらきかけるようにし、その後、徐々に指導者のはたらきかけを減らしていくようにした。このような姉に対するはたらきかけは対象児の友達に対しても同様に行われた。このようなアプローチによって、指導者の不在時や別の場面においても、姉や友達と協同遊びができるようになったと思われると述べています(奥田・井上,1999)。指導員との二者関係から友達との二者関係に変えていくにあたり、まず、本児と指導員のみの二者関係を確立します。この段階では、本児に人と関わることの楽しさを感じてもらえるようにします。次に、本児と指導員のしている遊びに他の友達を誘い、三者関係を確立します。指導員が本児と友達との間を取り持つことによって、本児と友達との関係が上手くいくよう調整します。そして、指導員の仲介の上で友達と仲良く遊ぶ経験を積み重ねてもらい、友達と一緒に遊ぶ楽しさを感じられるようにするとともに、友達との関わり方を身に付けられるようにします。そして、指導員は徐々に友達と遊ぶ際の介入を減らしていき、本児と友達との二者関係を確立します。このように細かいステップを踏んで指導員との関わりから友達との関わりへと発展させ、友達と一緒に遊ぶことができるようにします。自閉症児においては、「やりとりを始発する能力の障害(別府,1997)」が指摘されていますが、フリー・オペラント技法は、自閉症児をとりまく環境要因、すなわち自発された行動の後続事象としての他者の対応方法、先行事象としての他者の存在、子どもの行動の三項関係から行動の始発をとらえることで、「やりとりを始発する行動」の形成可能性を示します(奥田・井上,1999)。フリー・オペラント技法は、弊所の療育の中心的技法であり、より質の高いアプローチにより本児の自発性を引き出していきます。また、日戸・藤野(2017)は、自閉症児の環境について以下のように述べています。毎回「趣味の発表」の時間があり参加者に好評であった。(中略)参加者は習得したスキルを使ってやりとりを楽しみ、自信をつけていった。最初は子ども同士の関係よりも、支援者との関係形成の方が容易であったが、しばらくするとグループ内でのルールに沿って協力や競争がみられ始めた。その様子はASD児だけで構成された人工的なグループの中で、彼らは独自のダイナミズムに基づく仲間関係をゆっくりと発達させていった。そして、こうした一般集団から独立したASD同士の集団は、高度な社会性の要求や同世代のからかい・いじめの心配のない保護的な環境下で、本人たちに自信をつけさせる効果があると考察できる(日戸・藤野,2017)。弊所では、自分のお気に入りの物を持って来て、それについて5つの観点で発表するShow & Tellという発表活動をしています。本児はまだ取り組んだことはありませんが、指導員が本児の描いた絵を皆に見せて、皆から拍手をもらったことがあります。その際、本児は嬉しそうにしていました。指導員が見守る保護的な環境の中で発表活動に取り組み、自信をつけてもらうという観点において、Show & Tellは非常に有効であることから、本児にも是非チャレンジしてほしいと考えています。取り組んでもらう際には、原稿作りをサポートしたり、予め練習の機会を設けたりし、本児が不安なく取り組むことができるようにしていきます。また、対人関係の障がいを顕著に有する自閉症児であっても、他者との間に関係性を築き発達させることが可能です。また、自閉症児の支援においても健常児の育児や教育と同様に、関与者自身の主体性や教育的・療育的な意図を前面に出し、それを自閉症児に受け止めてもらうことが可能です。そして、そのためには、一見すると遠回りに見えますが、関与者が自分の意図を前面に押し出さず、自閉症児が持つ外からは汲み取りにくい意図や意思を尊重し、理解しようとする態度をもち続けることが必要です(榊原,2011)。また、まずは子どもの思いを受け止めてそれに応じ、自閉症児に対して抱いている指示的な思いを前面に押し出さない関与を行うことが必要です。そして関係性が熟してきて、関与者が自閉症児にとって馴染んだ他者となり、関与者の振る舞いが脅威的に映らず、自閉症児にとって親しみのある接触欲求の対象となってから、そこで初めて関与者も一個の主体として自分の思いを押し出していくという段階を踏んだ関わりが必要です(鯨岡,2005)。本児は、まだ自分の意見を伝えることはほとんどありませんが、関わりを深めていく中で本児の思いを汲み取り、尊重することができるよう、本児の理解に努めていきます。また、関わり手が自らの主体性を譲り、相手の主体性を尊重する、すなわち自閉症児の内的世界を理解し、それに応えようとする努力を続けることで、相互主体的な関係性を発達させていくことが可能です(榊原,2011)。これは、弊所が子どもの関わり方として採用しているアテンディングの考え方と一致しています。アテンディングとは、子どもに遊びを通して肯定的注目を提供しながら関係を育んでいく技法のことです。子どものリードにしたがって遊びを行って肯定的注目を与え、子どもが主体の関係を育んでいきます。一方、ASD児にとって仲間に対する社会的関心が十分に芽生えていないと考えられる学齢期において、ASD児同士の仲間・友人関係の形成を促進するためには、ASD児または発達障がい児同士による小集団を構成するだけでは不十分だと考えられます(日戸・藤野,2017)。ASD児同士であれば互いに干渉がなく傷つくことはありませんが、友達との関わりを学ぶことはできません。したがって、特性を理解した専門家の下で友達と関わる場を設定し、経験を積み重ねていくことが大切です。また、自閉症児と他者との関係性の発達において、自閉症児個人の発達が生じているとも考えられます。相互主体的な関係の発達は、ただ単に関係性が変容していくものではなく、その中で子どもはことばや対人場面での力や他の様々な能力を、意欲や意図を伴った形で身につけていきます(鯨岡,1999)。具体的には、他者との関係の発達は、自閉症児自身の象徴機能やコミュニケーション機能の発達を促します(神園,2000)。こうしたある意味では当たり前の発達を自閉症児が養育者や関係者など様々な人々との関係性の中で遂げるようにする支援が、鯨岡(2005)の言う関係を構成する個々人がそれぞれ前向きに生きる展望が持てるような関係支援の一つです。それゆえ、特定の相手の形成を関係の視点で終始させるのではなく、自閉症児自身がどのような能力をもつことがその関係を成立させるのかを明らかにすることも重要です(榊原,2011)。また、朴(2017)は、自由遊び場面で、20分間意図的にふり遊び(何かになり切る遊び)を実施することで、子ども同士の関わりを促すことができたと述べています(朴,2017)。また、荒井ら(2007)は、設定遊びとしてふり遊びを行い、以下のような有効性が示唆されたと述べています。第1に、ふり遊びは、対象児の想像力を高める効果を示した。第2に、ふり遊びは、大人とのコミュニケーションを促す効果を示した。第3に、ふり遊びの発達は、他児との相互交渉を促すという効果を示した。また、研究で対象となった4名の自閉スペクトラム症児は、ふり遊びの発達と密接に関連しながら、大人または他児との関わりを広げ、主体的に他者との遊びの共有を求めるように変化した(荒井ら,2007)。このことから、ふり遊びは、他児との相互交渉を促す効果があり、一人遊びから他者とかかわりのある遊びへの発展の手助けになると考えられる。では、ふり遊びの導入はなぜ子ども同士の関わりを促すことができたかというと、自由遊びとふり遊びの環境設定の違いにある。自由遊びは、子どもたちが自分で興味のある遊具を自由に選択し、遊べる環境であった。一方、ふり遊びは、最初から決められたシナリオに基づき、大人の誘導により遊びが展開され、その中で子どもたちは遊びに対するイメージを共有し、同じ遊びを全員で行う環境であった。この環境設定は、他児への注目が低かった対象児たちにとって、お互いに注目しやすい環境であったと推測できる(朴,2017)。つまり、一人遊びから他者とかかわりのある遊びへの発展には、大人の誘導により同じ遊びを全員で行う環境が必要で、プログラム療育の必要性が示唆されます。弊所では、プログラムを通して関わりを学ぶ機会が多く、楽しみながら友達関係スキルを自然に身につけていくことができます。

 本児は、様々な活動に一生懸命取り組み、楽しそうに過ごしています。今後も、様々な活動を通して友達との交流を促し、友達との関わりを増やしていくことができるよう支援していきます。

引用文献

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Juri F.