動因操作により参加したい気持ちを引き出し、集団行動の基礎を身に付ける
明るく人懐っこい性格で、ニコニコと楽しそうに過ごしています。自由遊びの時間は、歌を歌ったり、踊ったりすることが好きです。流行りの曲を元気よく歌ったり、楽しそうに踊ったりしています。他には、数字に関連する遊びが好きです。電卓で1、2、3…と順番に数字を入力したり、100、200…と大きな数を入力したりし、元気よく読み上げて楽しんでいます。また、転がしたサイコロを追いかけていき、出た目の数を言うことも気に入っていて、よく遊んでいます。また、パソコンで数字を入力することも好きで「111やりたい」と言うこともあります。まだ一人で遊ぶか指導員と一緒に遊ぶことが多いですが、友達と一緒に遊ぶことも出てきています。初めは、「○○君もやる?」と声を掛けると「やる」と言って一緒に遊び始めることが多かったですが、最近は仲間入りスキルが身に付きつつあり、友達のしていることに興味を示すと友達の遊んでいるところに近付いていき、「○○(本児)も入れて」と自分から言うことが増えています。ウノブロックでは、タワーからブロックをそっと引き抜く動きが上手にでき、順番もしっかりと守ることができました。他にも、友達と一緒にお絵描きしたり、ブロックで遊んだりし、少しずつ友達との関わりも出てきています。今後も「友達と一緒に遊ぶと楽しいな」という経験を積み重ねてもらい、友達と関わりながら楽しく過ごせるよう支援していきます。
戸外活動では、公園や室内アスレチック、博物館等に出掛けることを楽しみにしてくれています。身体の使い方が上手で、様々な遊具に積極的に挑戦し、楽しんでいます。伊吹山へ出掛けた時には、元気よく階段の数を数えながら頂上まで登りきることができ、本児の体力に驚かされました。公園では、自分の行きたい所へ走って行くことが多いですが、ペアの子と離れないように声を掛けたり、「ストップ」と声を掛けたりすると、声掛けにしっかりと応じることができるようになってきました。今後も活動を通して友達を意識する機会を増やし、様々な経験から友達との関わり方を少しずつ学んでもらいます。
コミュニケーションの面では、「(お菓子の袋が)開かない」「(ゼリーが)こぼれちゃった」「(友達が○○君(本児)の使っていた)おもちゃ持ってっちゃった」と困った事があると自分から指導員に助けを求めることができるようになりました。しかし、普段は独り言を言ったり、動画のセリフを言ったりしていることが多く、質問に答えたり会話をしたりする等のやりとりはまだできません。今後は、したいことやしてほしいことを言葉で表現できるよう、要求を言葉で伝える力をさらに伸ばしていきます。
運動エフェクトでは、マンツーマンで対応し、活動への参加を促しています。好きな種目はトナカイのソリ引きで、ハンモックを見ると自分から準備し、楽しんでいます。他には、ケンケンパや平均台、長縄の小波ジャンプ等、使う道具を見て何をすればよいか分かりやすいものは一人で行うことができています。集団遊びは年齢的にルール理解が難しいですが、指導員と一緒に参加し、楽しく身体を動かしています。今後も、友達と一緒に様々な種目に取り組んでもらい、楽しく身体を動かすことができるよう支援していきます。
学習の面では、切り替えがとても早く、「○○君、公文やるよ」と声を掛けると、すぐに机の所に来てくれます。公文では、数字を指差しながら読んだり、丸の数を数えたり、数字を書いたりする練習をがんばっています。また、最近は一人で教材を進める力もついてきて、1日分の教材を終えると「できました」と元気よく報告してくれます。今後も楽しく学習に取り組んでもらい、できることを少しずつ増やしていきます。
気になる点は、集団行動が難しい点です。マンツーマンで指導員がついて活動に参加していますが、指示がほとんど通りません。自分の好きなように自由に振る舞っている面もありますが、何をすればよいか分からないことが原因だと考えられます。自閉症児は、列に並ぶことの意味が分からず先頭にいるという例のように、他の場面でもどうしてそのようにしないければならないのかが分からないことが多くあります。本児も、ルールのある遊び、整列、あいさつの集合時に困り感をもっています。これらの困り感を減らすため、本児にとって分かりにくい世界の意味を本児にも分かるように伝えていくことが大切です。したがって、以下の支援を実施し、困り感を減らしていきます。1つ目は、動因操作を行い、活動への参加を促します。動因操作とは、子どもからの関りを促進することです。具体的には、本児の好む遊びを活動に取り入れ、「参加したい」という気持ちを引き出します。ここまでの様子から、やり方が分かると運動することが楽しくなり、「もっとやりたい」という気持ちが出てきています。現時点、本児は、ドッジボールや様々な種類の鬼ごっこはルール理解が難しく、自由に振る舞っていますが、平均台やケンケンパ、玉入れ等、道具を見て何をすればよいか分かりやすいものはルールに沿って行い適応的に振る舞うことができています。まずは、マンツーマンで補助しながら様々な種目に繰り返し取り組んでもらい、一つずつ好きな種目を増やしていきます。2つ目は、聞き手行動学習を行います。現時点では、年齢も関係していると思いますが、「○○してね」と声を掛けると「イヤ」と言って走り回ることが多くあります。現在は自分のしたいようにしたいという気持ちが強いですが、今後成長していくとほめられたいという気持ちが勝るようになり、相手にほめられるような行動を選択することができるようになっていきます。現時点では、「○○取ってきて」「こっちに来て」「座って」等、簡単な指示に応じてほめられる経験を積み重ねてもらい、「ほめられると嬉しいな」、「もっとほめられたいな」という気持ちを引き出していきます。3つ目は、何をすればよいか分かりやすいよう環境を整えます。運動エフェクトの整列や長縄跳び等において、「○○君の後ろ」と、お手本となる子を真似してもらうようにしてもらったところ、動きや何をすべきかが少しずつ分かってきたものもあります。本児にとって、適応的な行動を学ぶには良い機会となっており効果があるので、継続していきます。
本児は、いつもニコニコとしていて、楽しそうに過ごしています。今後も本児の良い面をさらに伸ばすとともに、集団行動の基礎を身に付けることができるよう、支援を継続していきます。
Juri F.