事前対応により適応的な行動を習慣化し、自ら実行することができるようになる

 明るく人懐っこい性格で、友達や指導員と積極的に関わりをもち、楽しそうに過ごしています。自由遊びの時間は、身体を動かして遊ぶことが大好きで、いつも挟みドッジボールをして元気よく過ごしています。通所し始めた頃は「ボールが強く投げれないから」と、外野のラインより前に出て相手を追いかけながらボールを投げたり、外野になることを拒んだりすることがありましたが、繰り返し経験する中でボールを遠くまで投げられるようになり、ルールに沿って楽しむことができるようになりました。今後も友達と関わりながら楽しく過ごすことができるよう、支援していきます。

 戸外活動では、「今日はどこ行くの?」と、公園やプール、科学館、お祭、室内アスレチック等、様々な場所へ出掛けることを楽しみにしてくれています。戸外活動中は、指導員の見守りの下、グループ活動を実施しています。どこで遊びたいか自分の意見を伝えるだけでなく、友達の意見にも合わせることができ、いつも仲良く過ごすことができています。また、友達との関わり方が上手で、どの子と一緒のグループになっても、その友達と積極的に関わりながら楽しく過ごすことができています。帰りの際には、集合の時間になったことを伝えるとすぐに遊びを止めることができ、スムーズに切り替えることができています。今後も、思いっきり身体を動かす機会を提供するとともに、友達との交流を促進し、楽しく過ごしてもらいます。

 コミュニケーションの面では、時事の発表やShow & Tellに積極的に取り組んでくれています。時事の発表では、予め発表メモを作成してくれており、ニュースの内容を分かりやすく伝えることができ、上手です。Show & Tellでは、自分の好きな物を持ってきてよく発表してくれています。それは何か、どこでどのように手に入れたものか、その特徴は何か等、5つの観点を考えながら発表することができています。発表後の友達からの質問タイムでは、問われたことに答えることを意識できるようになってきて、余分な情報を入れず簡潔に答えられるようになってきました。今後も、意欲的に取り組んでいる現在の状態を維持し、コミュニケーション力をさらに伸ばしていきます。

 運動エフェクトでは、どの種目にも積極的に取り組み、楽しんでいます。記録会では、ドリブル100回を合格することができ、喜んでいました。繰り返し取り組んでいるうちにボールのコントロールが上手にできるようになり、ボールを安定したリズムでつくことができるようになりました。現在はV字ドリブルに挑戦中です。ボールの軌道がV字になるように意識し、がんばっています。ラダートレーニングでは、動きの理解が早く、お手本を見てすぐに正しく行うことができています。長縄の8の字跳びでは、回っている縄の中心に走り込むことを意識し、少しずつ上手になっています。集団遊びでは、ルール理解力があり、ルールに沿って楽しむことができています。高鬼では、島から島へ積極的に移動したり、遠くの島へ一気に駆け抜けたりし、楽しんでいます。8の字鬼では、鬼に捕まらないようタイミングを考えてスタートをきることができ、判断力があります。ドッジボールでは、ボールをすばやくかわしたり、積極的にボールを投げたりし、楽しんでいます。今後も、様々な運動経験を積み重ねてもらい運動技能の向上を図っていきます。

 学習の面では、宿題と公文に取り組んでいます。学習への切り替えが早く、自ら準備しスムーズに始めることができています。また、その日の課題に集中して取り組むことができており、

学習に臨む態度が良好です。公文では、たし算・ひき算の筆算の練習をしています。スラスラと解くことができており、計算ミスもほとんどなく、100点をたくさんとることができています。今後も、丁寧に学習のサポートを実施し、学力の向上を図っていきます。

 気になる点は、集団への指示を聞き逃したり、場にそぐわない行動をしたりすることが多い点です。具体的には、集団への指示後、どうすればよいか分からず出遅れたり、言われたばかりのことを質問したりすることがよくあります。また、思いつきの行動が多く、勝手に物を取りに行ったり、勝手に話し始めたりすることがよくあります。これらの点の改善を図るため、行動分析学の以下の手続きに基づいて支援を実施していきます。1つ目は、プロンプト(行動を促すきっかけとなる刺激)を増やします。本児の場合、集団への指示に対し、自分にとって必要な情報だという認識を持ちづらく、行動を促すのに十分な刺激とはなっていないと考えられます。したがって、「今から大事なことを言うよ」「今から話すから聞いてね」と予め個別に声を掛ける等、今何をすべきかを明確に伝え、行動を促します。本児が聞く姿勢になるまでプロンプトを増やし、適応的な行動を引き出します。また、できるようになってきたら徐々にプロンプトを減らし、プロンプトがなくても適応的な行動が維持されるようにします。2つ目は、予め行動の重要性を言語化する等、確立操作を行います。確立操作とは、ある特定の好子や嫌子を獲得する行動に影響を及ぼす操作のことです。具体的には、「個別に声を掛けられなくても重要な点を聞き逃さないことは大切だ」「話を聞いてすぐに行動に移せる方がかっこいい」「集団の中では、皆と同じように行動できるようになることが重要だ」等の内容を前もって伝えておき、行動の生起を促します。また、「話が始まったら自分に関係のあることとしてしっかりと聞くこと」「何か言いたいことがあったら手を挙げること」「何かしたいことがあったら先に許可を求めること」等をルールとして伝え、ルール支配行動による適応的な行動も引き出していきます。ルール支配行動の特徴は、直接経験していなくてもアドバイス等の言語刺激のみで行動が生起することです。つまり、「歯磨きしないと虫歯になるよ」「毎日○○を食べたら健康になるよ」等、「○○したら××という結果が生じる」という随伴性を伴う言葉によって未経験の状態でも行動が制限され、他者からの依頼に応じたり、他者の体験を利用して自分も同じ行動をとったりするようになります。また、ルール化しておくことは、すべき行動が明確に分かりやすくなるだけでなく、ルールに照らして自分の行動が適切であったかどうかを振り返ることも容易になり、自身の不適切な行動を自覚し適応的な行動に改めるきっかけにもなります。また、周囲の人からの承認で強化されます。問題行動が生じなかった場合に「今日はしっかりと話が聞けたね」「先に○○してもいいか聞けたね」等、良い行動を具体的に承認する声掛けを行うと、その良い行動が強化され、また同じように行動するようになります。さらに、強化期間を限定すると価値が高まります。「今日も一日がんばったね」と長い期間でフィードバックするよりも、「言われたらすぐに行動に移せたね」「ルールを守れたね」「勝手な行動をしなかったね」等、適応的な行動をとる度にほめる短い期間でのフィードバックの方が好子の価値が高くなり、また良い行動をとるようになります。このように、事前対応により適応的な行動を引き出して成功体験を積み重ねられるようにし、できたことをほめて意欲を高め、好循環を生み出していきます。

 本児は、様々な活動に積極的に取り組み、ぐんぐん力を伸ばしています。今後も、本児の良い面をさらに伸ばすとともに、事前対応により適応的な行動を習慣化し、自ら実行することができるよう支援していきます。

Juri F.